主婦に完璧を求める社会風潮~デモンストレーターの現場から その1

この仕事を始めて3ヶ月ほど経った頃。とあるスーパーで、浅漬けのもとのデモを担当した。

デモ場所を通りかかったご老人。いつもの要領で、私が試食をすすめながら商品説明を始めると、とつぜん怒り出したのだ、、、「こんなものを使って漬物を漬けるとは何ちゅう世の中や」と。
さらに口泡を飛ばして息巻いた。
「死んだワシの嫁はんなんか、ヌカもシオも一から漬けとったデ! 朝の早よから畑にダイコン抜きに行ってな、、、。ホンマ、最近の女は、楽することばかり考えている!」。

同じようなことは、後日、炊き込みご飯のデモでも言われたし、紙おむつのデモにいたっては、
「自分の手で我が子のウンチをゴシゴシ洗って落としてこそ、母性愛が芽生えるんや。それを、今日日の母親は怠け癖がついているよってに、簡単にゴミ箱に捨てられる紙おむつを使う。やから、子に愛情が持てず、虐待とかが起こる。ワシはそう思うな」
と決めつけられた。
どちらも、70歳過ぎの男性である。

ふうん。
彼らの育った時代を考えれば、「まあ、何て偏ったものの見方なの」と一蹴出来ない面もあるが、妻や嫁をはじめ、周囲の女性からは疎んじられているだろうなあ、、、「お皿一つ洗わないし、その前に洗えないくせに、現在の女はどうとか、説教ばかりしている」。こんなふうに思われているはず。

私も、表面では
「はあ、ごもっともでございますね。私も含め今自分の女は全くなっていませんね。申し訳ございません」
と、合わせていたけれど、内心では
「そんなにお嘆きになるのなら、御仁さま、女性をあてにせず、自らの御手でお漬物を漬けられてはいかがでしょう? また、可愛いお孫さまの為に、お祖父さまである御仁さまもおむつをお洗いになってはいかがでしょう?」
と返したくなったけれど、やめておいた。彼らの見当違いな発言は、自分にその体験がないからこそ、いとも気軽に発することが出来る類の内容だからだ。
聞き流し、「時代遅れのケッタイな爺さんやな」と、腹の底で気の毒がっていてよい。

これが、自分も家事育児の体験がある女性となると、こうはいかない(少数ながら、主婦に完璧を求める社会風潮に染まっている人は女性の中にもいる)。
女を真実たたくのは実は同じ女。つくづく感じる時がある。
次回をお楽しみに。