主婦に完璧を求める社会風潮~デモンストレーターの現場から。 その2。

和食の基本とされる出汁(だし)。
それだけに、「粉末型」「液体型」「抽出型」と、タイプを問わず出汁の宣伝販売は頻繁に行われるが、この現場でたまーに出くわすんだな、「家事は完璧にこなしております」と言い切る「主婦のカガミ」みたいなお客様。
私の体験では、全員が高年女性である。

「こういうインスタントの出汁を使うことを、あなた、何というか、ご存知?」
眼鏡の奥で冷たく光る眼差しと共に、やや嵩高い(かさだかい)声で、その婦人は私に言った。
「いえ、知りません」
「手抜きというんですよ、テヌキ!」
ピシャリとムチを叩きつけるような口調。
「プロの主婦だったらね、そういうことは一切しない。横着の一言に尽きるわね、大切な出汁を自分で引かないなんて」
「はあ、、、」
「はあじゃありませんよ。出汁くらい、、、。息子の嫁も液体の和風出汁を使って煮物なんか作っていて、注意したら、仕事と子育てが大変で時間がないって口答えするけれど、わたくしが若い頃には、、、」
あとはご想像されたい。
延々と説教、かつ、自分がいかに家事をきちんとしているか、その自慢話。
聞いていて、この人のお嫁さんに同情したくなった。
きっと、息子の家に行くたびに、お嫁さんの家事のやり方を一つ一つチェックし、チクチクと突っ込みを入れているんだろうな。

そりゃ、昆布と鰹などで丁寧に取った出汁は最高だよ。おすましを作るとよくわかる。
もっとも、人間、忙しかったり、身体の調子が悪くてなるべく手早く済ませたい時もあるわけで、そんな時には、テヌキでもインスタント出汁を使っていいんじゃなくて?

それに、今日日のインスタント出汁は味も悪くないよ。本当、下手に自分で出汁を取るより美味しい場合があるかも。

まあ、しかし、この手の「主婦のカガミ」様は、自ら家事をやってきただけに、お皿も洗えないくせに説教だけする御仁方に比べると、対応がずっと難しい。
エベレスト山より高いプライドをお持ちだし。

とは言え、時代により、主婦を取り巻く状況もかわってきている。
変なプライドはお捨てになり、ただの一日でも「テヌキしまくりのダメ主婦」を体験してみたら、もっと楽に呼吸できるようになるんじゃない、あなたも周りも。