吃音のデモンストレーター その2

「吃音のデモンストレーター」の続き。

新卒で就職した会社を、お局様やその取り巻きたちによるパワハラで心を病み、およそ1年で退社したZさん。自分に自信をなくし、半引きこもりの生活が3ヶ月ほど続いた。

それでも、季節が1つ過ぎるとかなり落ち着いてきて、お母さんが働いていたこともあり、家事は家にいるZさんがしようという気になってきたとか。
「幸い、私、おうちのことをするのは大好きだったし」。

そんなある日。近所のスーパーに出かけたZさんは、時おり同じ音を連続して出しながら練り物を販売している笑顔のおじさんを見た。
「吃り(どもり)の人だったけれど、不思議と耳障りではない。それどころか、商品の説明を聞いていると、何かこう、ほのぼのとした気分になってきて、こちらもほっこりしてくるんです」。

それは、きっと、おじさんが仕事を心から楽しんでいる様子がお客さんにも店の人にも伝わってきているからだろうと思った、と彼女は語った。
「で、私、気がついたんですよ、私も本当はこんな風に働きたかったんだって。仕事が好きでたまらない。そんな感じでね」。

おじさんは、その店のレギュラーデモンストレーターだったらしく、毎週水曜日になると、決まってやって来た。
すっかりおじさんのファンになっていた彼女とも馴染みとなり、練り物を使った料理や肴の作り方も教えてくれるように。
「素朴で、温かい口調。吃りなんか、全然気にならない」。

そうこうするうち、おじさんは、彼女にこの仕事をしてみないかと勧めたそうな(買い物ついでに、雑談で、退社のいきさつや現在の状況なども話す仲になっていたのだ)。
「私が、引っ込み思案で人見知りもするタイプだから販売なんて絶対に出来ないと言ったら、いやいや現役時代は工場勤めで人と接する機会があまりなかった年寄りのワシでも勤まるのだから若いあんたなら何も心配ない、と励ましてくれて」。

関西に転勤になった婚約者と暮らすため現在の派遣会社に移った後(のち)も、おじさんには本当に感謝している、と彼女は言った。

Zさんの体験談からは、人の気持ちを動かすのは表面的なものではないということが、よくわかるね。

なお、吃音で悩んでおられる方。
あなたが想っているほど、人はあなたの吃音を気にしていませんよ。
まあ、悩む気持ちは同じ吃音者としてわかるんだが(私の場合は、吃音は完治していないものの、吃る回数自体は非常に少なくなった)。

どうしても気になるのなら、ジョー・ジラード氏がとった方法を試してもよいかも知れない。

写真は、大阪のミナミにある、グリコの看板。
このお兄さんのように、気持ちだけでも常に笑顔で走っていたいものである。

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