森下洋子氏をご存知の方がいるだろうか。
1948年生まれの、日本を代表するバレリーナである。
3歳からバレエを習い始めた森下氏。中学校に上がってからは、自らの意思で、有名な先生の指導を受けるべく単身上京して先生宅の内弟子(住み込み弟子)に。
先生は、森下氏に
「バレエを目指していても、女は女。(女として)一通りのことが出来ないといけない」
と、バレエレッスンを授ける前に、まずは炊事をはじめとする家事一般を厳しく仕込んだと言う。
1960年、今からざっと60年前のことである。
森下氏は
「知っていて、悪くないと思いました」
と、このシゴキ(?)に耐えた。
これ、皆さん、どう思う?
現在では、様々な見解があろうが、私個人としては、先生の森下氏に対する深い愛情を感じる。
なぜなら、バレエもフィギュアスケート同様に厳しいトレーニングを必要とするがゆえに、その過程で事故や怪我に見舞われる確率も高い。
かつ、ステージに立つためには、時のタイミング、すなわち「運」も必要。
どんなに本人に才能があり、血を吐くような努力を重ねても、それが報われないこともあるのだ、、、残念ながら。
そんな状況になり、バレエを諦めざるを得なくなった女の子が、仮に
「私はバレエしか出来ません」
なんてザマだったら、どう?
かわいそうでしょ。
せめて「生活者」としての実務力と常識があれば、他に道もあるよね。
森下氏の先生は、そこを考えていたのだと思う。
バレエにしろフィギュアスケートにしろ、確かに一芸に秀でていることは大切だし、気が遠くならんばかりの訓練に耐えて晴れの舞台に出るだけの切符を勝ち取った実力と努力には、素直に感服する。
それを百も承知で、当の本人に言いたい。
「バレエやフィギュアスケート以外にも世界はある。実は、そちらで過ごす時間の方が人生では多いんだよ」
と。
そして、このこと、コーチと呼ばれる方々にも心にとどめておいて欲しい。