マイバースデイ

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三月二十一日のマイバースデイ。
洗濯機をまわしながら前日の仕事のレポートを書き、部屋に掃除機をあてて、すき焼きの用意をした後、ネットや携帯で送られてきたバースデイメッセージに返信していたら、あらら、夜になってしまった。

何と言うことのない、繰り返される日常の流れの中の、ほんの一日。
特別に良くもなし。特別に悪くもなし。
これが、これこそが、幸福そのものであることに気づいたのは、いつのことだったか。

正直、この年になれば、ケーキやプレゼントなどの「モノ」よりも、あたたかい一言、すなわち「ココロ」の方が、沁みるのだ。
物欲がなくなってきているのだろう。

翌日は湖北の長浜で仕事。名物の「堅ボーロ」(写真)を土産に買って
帰った。

このボーロ。宮内庁の御用達だけあって、味はいい。ほんのりと生姜が効いた、素朴な甘味が気持を落ち着かせる。
ただ、ネーミング通りに、固い。歯が弱くなくても、一度では噛み砕けない。舌の上で転がせ、唾液で溶かすような感じで柔らかくしながら、少しずつ食べる。そうこうしているうちに、独特の風味が口中いっぱいに広がる。
ある意味、美味しさを長く感じることが出来る、「贅沢な」お菓子だ。

第二次大戦時、湖北地方の出征兵士の慰問袋には、この堅ボーロが必ず入れられていたそうな。一瞬の気も抜けない戦場でも、星空を見上げて故郷に想いをはせる夜も、たまにはあったはず。兵士たちが
頬張ったボーロは、ささくれがちな彼らをそっと癒したに違いない。