高くついた忘れ物

ポカの一つが、今週の月曜日、かのブランド鶏の宣伝販売をするためのトングを忘れていったこと。
マネキンを始めて11年目。初めての失態だった。

鶏肉を焼くだけだから、箸で代用は出来るけれど、トングの方がやりやす
く、スピードも速い。とにかく、通常の三倍ほどの値段がついている鶏肉。食べて味を知ってもらわないと売れないのだ。迅速さが大切なわけ。

地域密着型の大きくない店舗。トングなど置いていない。
店に話すと、精肉ではなく水産部門の人がトングを貸して下さった。ただし、魚掴み専用のプラスチック製。まあ、お魚を扱うんだからねえ。
一瞬、迷ったが、クッキングシートを敷くし、注意してなるべくトングをホットプレートにつけないようにすれば大丈夫だろうと思い、お借りした。
結果は、ああ、先の部分が熱でささくれた。少しめくれてパチンと割れた箇所が一カ所。

「ごめんなさい。同じ種類のトングを買って送ります」
と水産部門のアルバイトの人に伝言を残し、しばらくしてかかってきた水産部門責任者からの電話にもそう繰り返したのだが、意外や意外、プラスチック製のトングって、最近はないのねえ! 

「先っちょだけがプラとかシリコンのトングならあるんです」
と、翌日にくだんの店に電話をしたら、それでもかまわないけれど、その先っちょ自体がギザギザでは都合が悪いそうな。丸味がないと。
このタイプが、また、ないんだ。平和堂西友ニトリコーナン、ミーツなど、考えられうる限りの近辺の店に問い合わせても、ダメ。
仕方なくネットで検索したら、やっと一つ見つけた。OXO(オクソー)のシリコントング。価格は2980円。

店舗にお借りしたトングは、どう見ても高いものではなかった。実際、その鶏肉のデモの翌日に入った店舗のコロッケ売り場に同じようなトングが置いてあったので従業員の人に尋ねたら、
「こういうの、割とありますよ。百円ショップにもね」
と返ってきた。
そうなんだろう。あるところにはあるのだろう。
とは言え、私の近辺にはない。

「お金の問題ではない」
と、その高価なオクソーのトングをネット注文し(これがけっこう大変だった。人気商品らしく、アマゾンをはじめ複数のネットショップで品切れ。最後の望みをかけてアクセスしたオクソー自身のウェブサイトに在庫があった)、わが家に届くや、迷惑をかけた店舗に返送した。

「たかがトングでしょ。黙って置いて帰ったらよかったのに。次にそこに行くかどうか、わからないし。買い替えるにしても、店の経費。担当者の懐が痛むわけじゃない」との同業者の意見もあった。
確かに、店に借りたホットプレートの蓋を床に落として摘みを破損したり、最悪は割ってしまっても、そのままにしておくマネキンもいるからねえ。

悲しいかな。私は、それが出来ないのだ。そんなことをしたら、自分の中でひきずってしまう。

たった一つの忘れ物が、高くついた。