まずは聞き役に徹することは販売の基本?

人は話を聞いてもらえるだけでやすらぐ。
実際、店頭に立っていてお客様から身の上話や思い出話、自慢話、時に愚痴を聞かされ、立場上フンフンとうなづきながら耳を傾けていると、
「よくぞ聞いてくれた」
と感謝され、そのお礼にと商品を買ってもらったことは少なくない。
人は皆、自分をわかって欲しいのだ。認められたいのだ。主人公は基本的には自分でありたいのだ。

以前にもお話しした、15年間のカーセールスマン歴で13001台の車を売り上げ(1日平均6台)、ギネスブックにも掲載されたジョー・ジラード氏も、セールスのコツは「まずは聞き役に徹すること」と著書の中で説いている。

ジラード氏がセールスマンになってまださほど経っていない頃、セールス活動の結果95パーセントまで購入してくれる確率となったお客さんを、一瞬にして逃したことがあったそうな。
ジラード氏はくだんのお客さんに電話をかけた。
「何か私の態度に問題があったのでしょうか? あれば、今後の参考にしたいので教えて下さい」。

お客さんは答えた。
「あなたは、我々の会話の最後の方、きちんと私の話を聞いていなかった」。
つまり、こういうことだ。
お客さんには医者を目指している自慢の息子がおり、ジラード氏から車を買うと決めた後、気持ちを落ち着かせるために(そりゃ安くない買い物だからね。気持ちはどうしても高ぶる)、我が息子がいかに優秀で士気も高いか、語り始めた。が、契約を急ぐジラード氏は上の空。お客さんの気持ちはそこでしぼんでしまったのだ。

売ろう売ろうと口を出す前に、目の前のお客さんをよく観察し、訴えに真剣に耳を傾ける。
これぞ、営業や販売の基本かも知れない。
私たちデモンストレーターの世界でも、推しが強すぎるデモンストレーターはお客さんに嫌われるからねえ。