車で行けば京都からでもさほど手間どらないのに、電車を利用すると乗り換えを三度もしないといけない。グリル鍋が入った大きなカートを持参する身には、これがけっこう腰にくる。
おまけに、時間的に朝のラッシュアワーにあたる。
「世間は盆休みやから、今回は現場まで座って行けるやろ」
と楽観していたら、どうして。いつもと同じく立ちっ放し。盆でも仕事をしている人は多いのだと、再認識した。
「あなたの責任で、良識を守り、そつなく仕事をして下さい」
こんな感じ。
マネキンにとっては、とても仕事がしやすい雰囲気だ。
この店もそう。
いいわあ、こういうの。
ただし、これは、私がある程度まで仕事に慣れているから。
初めてきた店でも、試食台が置いてある場所とか、売場の電源はどこかとか、おおよそのカンでわ
かるのだ。試食の準備に時間はかからない。
これが、あまりデモ体験がない新人だったら、お店の対応はあっさりし過ぎていると感じて、戸惑
うだろうね。
おとなしいお客様が多い店で、試食もあまり出なかったけれど、完売だった。
すぐ横にエバラのスキヤキのタレが50円安い値段で置かれていたけれど、あまり影響は受けなかっ
た。試食していただいたら買って下さるケースが大半。
「まあ50円くらい。よばれたし」
そんなに節約節約していない雰囲気のお客さんが多かった。
お盆で、遠くにいる息子や娘が孫連れで帰ってくることではあるしね。
帰り際、パートさんの一人に言われた。
「おたく、六時になったら、さっと店を出てよろしいねんで。せやんと、京都から来てはんのに、遅
うなってしまいますやろ」
優しいでしょ。グループ名は明かさないが、ギリギリの六時までデモしていないとパートでも怒り
たくる店もあるのよ。
「何しに来てんの? 仕事、する気があんの?」
我家に帰宅したのは九時過ぎ。
帰路、生あくびが連発した困った。
まったりと過ぎた金曜日が終わった。