アイスコーヒー

土曜日は四条堀川のアイハートUCCのアイスコーヒーのデモ。
 暑い一日。古都は燃え上がった。
 もっとも、冷商品売場の前に一日中いた私は、身体の芯からガチガチに凍り付いた。
 昼食に食べた京風ラーメンの温かさが四肢の隅々まで染み渡った。

 アイスコーヒーのデモは、易しそうで、なかなか難しい。
 低価格のブレンディは何もしなくても売れるし、高価な小川珈琲も、値下げさえしていてくれたら、
これはこれで売れる。
 低と高の中間くらいに位置するUCCレベルのクラスが、一番しんどいのよ。
 コーヒーは好き嫌いがあるし。

 レギュラーだと、率直な話、UCCは小川やキーコーヒーに決してひけはとらないどころか、個人的
にずっと美味だと感じている。わけても、アロマシリーズの有機コーヒーとかハワイコナになると、
もうたまらないと言うか(高価だから滅多に買えないんだけれど)。
 それなのに、アイスとなると、どうしてこうなの?
 悪いけれど、小川の方がずっとコクがありまっせー。
 いや、UCCのもコクはあるんだけれど、小川と比べると、いかにも物足りない。

 まあ、しかし、とらえようである。
 物足りないということは、あっさりしていて、癖がないこと。
 後味の良さにもつながる。
 ここを強調して、とにもかくにも売った。

 人間の味覚は流動的なもの。暗示にもかかりやすい。
 お客様が試飲し、口中でまだ味わっておられる時、すかさず
「ね、おいしいでしょ? 甘さひかえめですっきりしているのにコーヒー本来のコクと香りは十分に残してありますから、ミルクとミックスしてカフェオーレにしていただいても、ミルクにコーヒーが負けないんですよ」
 といれると、ほとんどのお客様は
「ふんふん」
 と、首を縦に振られる。
 自分で味の判断を下す前に、たたみかけるような他人の言葉に、ついつられてしまうんだね。

 私自身は、アイスコーヒーは滅多に飲まない。
 冷え性のせいか、真夏でも、どうしても身体はホットを要求する。

 それに、まったりとした八月の昼下がり。けだるい気分のままに傾けるカップの中のコーヒーは、やはり氷がパリパリ鳴るアイスコーヒーではなく、冷めかかったホットコーヒですよ。