「日本はどうですか?」「サムイ」。

先だっての日曜日。大阪南部にあるスーパーでペットフードのデモを担当したことは述べた。

デモを始めて1時間ほど経った頃だったろうか。キャットフード売場で、恐らくはこの店で一番安価であろう固形フードと缶詰をまとめ買いしている男性を見かけた。
縮毛にコーヒー色の肌。汚れがついた作業ズボン。一目で外国人出稼ぎ労働者だとわかる。

カートに商品を山積みした彼。私がデモをしている場所にやってきたので、話しかけてみた。
片言の日本語ながら、発音にはクセがなく、こちらも非常に聞き取りやすい。

アフリカの赤道直下にある国から来ていること。いま住んでいるところの近所にいる野良猫たちに与えるため、給料をはたいて安いキャットフードをときどき買っていること。
朴訥と彼は話した。
「日本はどうですか?」
との私の問いには、愛想笑いを浮かべながら一言。
「サムイ」。

彼の国から日本まで、時間も費用も、どれだけかかるのだろう? たぶん直行便はまだないだろうから、ドバイかどこかで飛行機を乗り継いで来るのだろうけれど、最低でも20時間くらいの飛行時間はあるだろうし、もしかすると費用も格安を使っても同程度(20万)かも知れない。

彼の国で、20万は、200万?
いや、それ以上?
渡航費用を、家族や親戚のカンパ、あるいは現地で日本企業への労働をすすめるエージェントから借金している?

ともあれ、家族と離れ、気候も風習も食べ物も何より言葉も違う遠い異国に来て稼ぎ、仕送りもしていて、およそ豊かではないだろう生活から、野良猫に食べ物を買ってやっているその様に、彼の寂しさを見た気がした、、、野良猫の餌付けという行為は決してほめられたものではないけれど。

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