アルコールが抜けたところで、昨日の続きといこう。
昨日、プレミアム・ペットフードの「ピュリナ・ワン」がとてもよく売れたコーナン三条大路店は普段からお店の方が試供品をお客様に配って下さっている、と書いた。
こういう店は、他にもある。
私が体験した限りでは、ロイヤルホームセンターの奈良店、物集女店。
この手の店舗でのデモンストレーションは
「商品の好感度が緩やかに消費者に浸透し、ある日とつぜん売れ始める」
のが特徴だ。
商品販売、すなわち、売上は、マネキン一人の力で達成できるものでは決してないことを、あらためて感じさせてくれる。
時々、いるのよ、売上の自慢ばかりする人。
例えば、某派遣会社の、たぶん六十代と想われるおばはんがそう。
「近鉄百貨店のMOMOで私は明治のおいしい牛乳を1000本売った」
とか
「西友山科店で十勝の生クリームを売って売って売りまくり、何百と出たので、おほめの言葉をもらった」
とか。
私が
「へえ! 十勝、どれくらい売れたの?」
とカマをかけると、
「忘れた」。
嘘がばればれだよ。あの十勝生クリームが一日に何百と売れるはずがない。
いくらクリスマスが近づいていても、やはりケーキは作るより買う人の方が多いのが、実情だから。
他にも、自慢たらたらマネキンを何人か知っている。
彼女たちに共通しているのは、まず「声がやたら大きいこと」「比較的に販売しやすい商品ばかり担当していること」「私はよく売るのだという自信にあふれていること」「人の話をきかないこと」そして、もちろん「販売成績は上々であり、そのための努力は惜しまないこと」。
基本的には、単純で、まじめな人たちなのだ。
でも、彼女たちは間違っている。
商品を売っているのはマネキン一人ではない。
商品を開発したメーカーも売っているし、おろす問屋も売っているし、陳列する店舗も売っている。
さらに、商品CMを流すテレビも売っているし、電車内に下げられた吊り広告も売っているし、店頭に
設置されたPOPも売っている。
人、メディア、ビジュアル。あらゆるものが結束して、その商品をお客様にアピールしているのだ。
それを、マネキンである自分一人が売ったと思い込み、公言するなんて、勘違いもいいところ。
自信にあふれるのはよいけれど、そこまでいくと自信過剰となってしまう。
もっとも、程度の差こそあれ、さらにその気持ちを表に出す出さないを別にすれば、けっこういると
思うよ、こういうマネキン。
ある意味、ちょっと自信過剰なくらいでないと続かない仕事だからだ。
少し話はずれる。
その昔、山口百恵という大スターがいた。
失礼ながら特別に歌がうまいわけでも(同世代の同時期デビュー歌手なら森昌子や麻生よう子などの方
が、歌唱力ではずっと上ではなかろうか)、美人というわけでもない彼女が歌謡界トップの座にのぼりつ
めることが出来たのは
「成功は本人の力が51%、スタッフの力が49%という絶妙のバランスを維持したからだ」
と、ある音楽評論家は言う。
つまり、どんなにスター自身に才能があってもそれだけでは原石で終わるということなのだ。
その才能を認め、愛し、協力を惜しまない「周り」があってこそ、スターは磨かれ、輝き出す。
この話。私たちマネキンにもあてはまらないだろうか?
商品は自分一人で売るのではない。全体で売るのだ。
売上はその総合的な結果。
あくまで全体の力なのだ。