少々の誤差でやいやい言うないっ

 昨日の午後、派遣会社から電話がかかってきた。
「メーカーが報告書に書かれている売上数を店舗に問い合わせてチェックしたところ、5個違うことが
わかった。これは、あなただけではないんだけれど、どういうつもりか、嘘をついたのかと、問うて
きている」

 チェッ。
 5個くらいの誤差でやいやい言うないっ。

 実際はもっと誤差が出ることがある。
 私は、朝に現場に入った時、デモ場所にある在庫数を数え、終了時にやはり在庫数を把握。
 そうして、売上を出している。
 調理系のデモ時は、メモをとるゆとりがないことが多いからね。

 デモスタート時に100個商品があって、終了時に50個だったら、売上は50個だね。
 でも、こちらが休憩時間に行っている間にお店の人が、
「ちょっとエンドにもおいておこう」
 とか
「定番がカスカスになってきたから」
 とかの理由で、デモ場所の商品を持っていくことが、しばしばある。
 休憩に行っていたこちらはそんなことは知らないから、帰ってきて、商品が減っているのを見ると
「わわっ。売れたんや。チラシに載っているだけのことはある」
 と小躍りする(既存商品なら、マネキンがいない時の方が売れることは、決して珍しくない)
 その数を売上に計上する。

 だから、本当は定番やエンドに置いてある本数も数えるとよい。
 が、あえて私はそうしない。
 あくまでデモ場所だけの数。

 なぜなら、ちょくちょくあるのよね、苦労して売った商品が定番やエンドに、ポンと置いてある
こと。
 あれを見ると一度に覇気が失せるので、定番やエンドをのぞくのはやめている。

 あと、数え間違いもある。
 お客さんに商品説明している時にポンポンと商品が出ていたら、一つ一つ数えてられないやね。
 誤差はどうしても出る。

 一番いいのは、業務終了後に店舗側にポスレジで集計してもらうこと。
 とは言え、この作業を嫌がる店は多い。
 けっこう面倒くさいからだ。

 それにしても、今回のメーカーのMみそ、今までこういうことはなかった。
 報告書の数字と実際の数字を照らし合わせるなんて。
 仕事仲間からのメールでは
「Mみその担当者が変わったのではないか。新しい人は、猜疑心が強く、細かい人なのだろう」
 
 ははあ。三重県にある老舗の佃煮会社みたいな感じね。
 あそこも、売上数を一つ一つチェックする。
 我々を信用していない。
 それでいて、営業は必ず巡回にくるし、売上に超やかましい。

 夫は
「単価の安い商品なんやし、50個誤差があるのならともかく5個ぐらいで嘘つきよばわりする
会社、器が狭いで」
 と言う。
 実際には、Mみそでなく、今回の担当者が器が狭いのだけれど。

 また、夫はこうも言う。
「売上も大切やけど、その商品がお客さんにどう受け入れられたか、そちらの反応を知ること
の方が大切なんやないか。音楽かて、ものすごく完成度は高いのに売れないCDってのはある
やん。でも、そういうCDが結果として次の世代の音楽の布石になっていることは、よくある。
で、遅れてじわじわ売れてきたり。目先の売上をやいやい言わんでええ思うけどなあ」

 まあね。
 ただ、世が世。
 不況のただ中、どこの会社も生き残りに必死。
 一円でも多く売上が欲しいのは本音だろう。

 それにも増して腹立たしいのは、我々をかばってくれない派遣会社の本部である。
 彼らもやっぱり机と書類の中でしか、デモンストレーションの仕事をとらえない。
 だから、メーカーからクレームがくると、我々を責める。

 言っても、わからないに決まっているので、こちらは割り切るしかない。

 私は、マネキンの仕事は、もう創作のネタを探す手段と決めている。