幸せになるための27のドレス

 本国アメリカでは「ブリジット・ジョーンズの日記」以上のヒットを記録した、
幸せになるための27のドレス」。
 久々に平均点以上のラブコメディに巡り会い、満足度は100%。

 子どもの頃、従姉妹の結婚式の華やかさに感銘を受けて以来、
「いつかは自分もあのような美しい花嫁になりたい」
と願いつつも、現実にはブライダル会社の仕事で花嫁の付き添い役をするばか
りのジェーン。
 それでも、仕事はやり甲斐があるし、上司のジョージは自分の好みのタイプ。
 そこへ、自分とは正反対の奔放なキャラを持つ妹のテスがあらわれ、天真爛
漫な魅力でジョージのハートをたちまち射止めてしまう。
 ジェーンは、内心では揺れながらも、生来の慎み深さと責任感の強さから、
妹の結婚式を仕切ることに。
 そんなジェーンの前で、父親は
「お前のお母さんが着たんだよ」
 と、妹に、亡き母が結婚式でまとったウェディグドレスを差し出す。
「あれは私が先に着るはずだったのよ」
 さすがに悲しさを抑え切れなくなったジェーンは、結婚式をテーマに辛辣な
記事を書き続けるがゆえに敬遠してきた、地元の新聞社のライター、ケビンを
電話で呼び出し、胸のうちをぶつける……。

 自分よりまず他人のことを考えるジェーンは、大作「風と共に去りぬ」で例
えたなら、メラニーのような女性? 日本には、割といるのではなかろうか?
 ただ、「他人を押しのけてでも」という風潮が一般的なアメリカでは、キャ
リアを積む上でも、また意中の人をゲットする上でも、間違いなく不利な性格
だ。
 それだけに、その控えめな優しさを陰ながら愛する人はいるわけで、それが
今回の大ヒットにつながったと思う。
「もっと自分に自信を持って、外に向け、あなたの魅力をアピールしなさいよ。
あなたの優しさ、寛容さ、穏やかさが大好きな人はたくさんいるのだから」
 との応援メッセージと共に。

 ラブ・コメディの魅力の一つは、題材が身近なぶん、他のジャンルの映画より、登場人物をずっと等身大に感じることが出来る点。
 この映画でも、ジェーン、テス、ジョージ、ケビンは、私であり、あなたで
あり、隣の彼であり、彼女ではなかろうか。
 そうなのだ。
 本来は、誰しも、複数のキャラを内包している。
 様々な理由で、そのうちの一つが際立って表にあらわれ、それでその人とな
りを周囲に決定づける。

 また、ファッションや街の風景など、画面に彩りを添える「脇役」(そう、脇
役。小物ではない)も見物。

 原題 27 DRESSES
 製作 アメリカ(2007年)
 監督 アン・フレッチャ
 出演 キャサリン・ハイグル、ジェームス・マーズデン他