このマネキンという地位。
社会的にもっと認められていい。
でないと、いつまで経っても、我々は販売業の最下層。強き者のとばっちりを真っ先に、そして最大に食うという状況は変わらない。
現実には、人と接するのが嫌ではなく、一通りの家庭料理が作れる健康な人なら、性別や学歴、職歴にとらわれず、誰でも就くことが出来るようになっている。
年齢制限も緩い。
派遣会社によっては、自社で実績があるマネキンの紹介なら、面接さえ実施せず、履歴書も提出ささ
ず、即刻採用のケースもある。
それだから、問題もある。
この具体的な例は、今後、随時あかしていくね。もちろん、店舗名やメーカー名は伏せるし、ディ
ティールもぼかすところはぼかすよ。
私がマネキン採用に対して「こうしたらいいのになあ」と提案したいことの一つに、食品メーカーやスーパーによる、「マネキン職 新卒採用」がある。
専攻は別に食物や栄養系でなくてもよい。ほとんどのメーカーの営業職がそうであるように、全学部
全学科が対象。
給料制で、各種社会保障も完備。現場に向かう交通費や立替金は、少なくとも営業マンが出張経費を精算してもらうくらいの早さで処理。
現場に立つ前に研修を受け、マネキンにとって最低限の知識と、接客や調理の基本技術を学ぶ(現状
では米の研ぎ方も知らず、包丁も握れないマネキンが調理系のデモに入って問題になる場合がある。派遣会社にすればマネキンはコマだから誰でもよいのだけれど、これだからマネキンはねと我々までバカにされるのだよ)。
消費者と直に接するマネキン職を専属で数年経験。それから、本人に選んでもらうのだ。
「このままずっと現場でマネキンをしていてもいいよ。後輩の指導もしてもらえるし、消費者の意見も
吸い取ってもらえる。でも、あなたが望めば、関連業種として商品企画や営業に行ってもらってもいいよ。別の道もあるんだよ」
と。
イズミヤやイオン系などでは、よく栄養士による実演もおこなわれている。
私が見学した限り、あれは、やはり「上」からの消費者アプローチだ。すなわち、栄養士の「先生」が消費者に「教えてあげて」いるのだ。
そうではなく、皆プライベートでは消費者なのだから対等の目線で、
「こういう商品がありますよ。これはこんな使い方もあるんですよ」
と「紹介」する。
こういう職業があってもよい。
この案、どうですか?
違う世界の話かも知れないが、サーカスの曲芸師だって、現在では新卒採用がメイン。体育大学や
体操部が有名な高校などに求人票を出し、試験と面接を経て採用される。給料制で、休日もきちんと
とれ、イザという時の保証もある。
最近のサーカスが明るい雰囲気なのは、こういう雇用面での変化がある。
人間は基本的に「安定」が好きだ。
身分が保証されれば仕事に対する意識も変わる。メーカーや店舗が望んでやまない売上だって、伸びるはず。
マネキンの社会的地位の向上、そのための雇用整備を切に願う。