「こちらがメーカーを指名出来ないのかな」
と。
「指名」という言葉を聞いて、我々マネキンが連想するのは、もちろんメーカー側からの指名。売上実績や接客態度などが考慮され
「我が社の商品をぜひあの人に担当してもらいたい」
と、エージェンシーや派遣会社を通じ、依頼がくる。
これを、逆にした形があってもよいのではないか。
指名されるのは名誉なことである。日頃の我が働きが評価されるわけだから。
それはじゅうぶん認めた上で、やはり、しょせんは「受身」であることは否定出来ない。
マネキンもプライベートでは一消費者である。好きな商品もあれば、嫌いな商品もある。
好きな商品なら、
「この良さをぜひ他の人にも知ってもらいたい」
と望むのが、自然な感情。ちょうど、
「どこそこのケーキ屋のシフォンは美味しいよ。一度ためしてごらん」
と、ママ友たちに雑談がてら言うように。
肝心の関西で知名度ほどには人気がないからだ(関東では違う。「京都」というブランドがものを言
う)。私は、何度か地元京都で賀茂なすや九条ネギを担当し、痛感した。
理由は、まず、値段の高さ。次に、調理法がわからない、あるいは調理に手間がかかるという点
があげられる。
京野菜のレシピブックをみてごらん。費用も時間もかかる料理が、大半でしょう?
間違っても、五分以内で作れるクイックなものは紹介されていないでしょう?
ここが問題。
今日日の主婦は忙しい。子どもの手が離れたらフルタイムパートタイムにかかわらず働きに出る
人が珍しくないし、専業主婦でも、地域や子どもの学校の役員、ボランティア活動などで何かと家
を留守にする。子どもの塾や習い事の送迎もある。ひところのような「家内」といった存在では、
決してないのだ。
当然、食事の準備にもそんなに時間はかけられない。
クイッククッキングの必要性が生じる。
「京野菜は高級素材。そんな安っぽい料理に使うべきではない」
との意見もあろう。それは、ある意味、正しい。
正しいからこそ、その逆も真なりや。
高級素材を使って、パッパッパッとお手軽に一品を作る。
これってかっこいいよね?
そもそも素材が確かな食品こそ、変にひねらず素直に調理してあげた方が美味しさが際立つのだ。
京野菜の担当になったら、京都の風土や食の歴史も交えつつ
「京野菜はこんなにお手軽に使えるよ。しかも、素材の良さあってこその美味しさ」
とPRしたい。
願わくば、関西以外の地域にも行きたいな。四国や九州など、ここの出である麦味噌が京都です
ごく売れるんだもの。味覚的にも受け入れられると思う。
こちらも、その土地の野菜を知りたいしね。
こういう逆指名。現在のマネキンの世界では認められない。
残念だね。