
販売を担当。
ギフト販売は好きではない。
退屈なんだもの、正直いって。
「お中元は何にしようかしら?」
ギフトコーナーに立ち寄るお客様に話しかけ、趣向や予算、送る先
の年齢構成などをさりげなく聞き出した上で、担当メーカーの商品
を薦める。
この流れが、ゆったり、まったり。
鍋などの荷物は持たなくてよいし、担当メーカーによっては放って
おいても売れるから、
「ギフト、だぁーいすき」
と公言する同業者もいるが、私はねぇ、ダメだわ。
試食品を作るために時間に追われ、食べまくられてアタマにき、売
上を問われても、時間が経つのが早い通常の試食販売の方が向いて
いる。
雨の中、現場に向かう途中で、昭和喫茶「ハーモニカ」を見つけた。
外観から判断する限り、映画「三丁目の夕日」の世界にひたること
が出来るつくりらしい。
足踏みミシン、真空管ラジオ、黒電話。
ある年齢の人には懐かしい限り。
昭和二十年代のハーモニカの複製も販売しているらしい。
過去を振り返るのは好きではないけれど、人は時に過去によって希望を与えられる。
たまには、思い出にふけるのも悪くない。
それにしても、私たちの仕事は、
「美味しいコーヒーを飲ませてくれる店を見つけた」
「雨上がりの景色の鮮やかさに目を奪われた」
「地域の特産物がお手頃価格で売っていた」
などなど、小さな楽しみを見つけ、そこにヨロコビを見いださねば、続かない仕事だ。
「いつでも夢を」。
まだ日本がオリンピックを迎えない頃、すなわち豊かでなかった時
代にヒットした曲だが、あのココロは、豊かになり過ぎて、弾けて、歪んでしまった二十一世紀の今日でも通じている。