おまじない除菌の熱湯消毒

先だって出会った「潔癖症のお客さん」の話を、違う現場で一緒になったベテランの同業者に話したら、
「ああ、そんな困ったさん、おるなあ。でも、そういう人はそういう人。どこまでもどこまでも、そういう人。だから、腹底ではカチンときても、こちらが合わせてあげるしかないわなあ」
と言われた。
「ホンマは100%の除菌なんてありえないんだけどね、、、いくら消毒しても生き残るシブトイ菌はおるから。で、人間の側に力があればその菌に勝つし、反対になければ負けて病気になったりする。だから、除菌と合わせて菌をやっつける抵抗力をつけることも大事。ま、ここいらの知識は、実家が薬局やっているから、普通の人よりはあるつもり」。

その上で、清潔であることはいいことだし、食品を扱う以上は心がけなくてはいけないことなのだから、自分が出来うる範囲内で衛生には気をつけた方がいいと、アドバイスされた。
「最近は規則も細かくなっているしな、、、入店時に従業員や業者は全員アルコールスプレイをせなあかん店なんて、10年前はそんなに多くなかったやろ?」
確かにそうですね。
少なくとも、関西では。

私は、およそ潔癖症からはほど遠い人間ながら、まな板や包丁、キッチンバサミ、トングその他の調理器具の熱湯消毒だけは、仕事が終わった日に必ずおこなっている。
13年前だったか。あるメーカーの専属デモンストレーターから、例えばキッチンバサミのギザギザ部分に肉眼では見えない程度の食物カスが残っていてもそこから雑菌がわく可能性があると教えられ、さらに、それだから私はピザなどを担当すると業務終了後に必ず鋏を煮沸すると聞いて、なるほどねと思ったのだ。
以後、私も彼女の殺菌行為を真似させていただいている。
仕事の日がしばらく空いた時には、新たな仕事の前日にもう一度熱湯消毒。
「念には念を」のココロで、まあ、おまじないみたいなものである。

ダブルで殺菌していても、ベテラン同業者が話す通り、「ワハハハハ。熱さにゃ、わしゃ、慣れとるわい。最後の最後まで、わしゃ、タエシノブぞい」と高笑いをしている菌もいることだろう。
それでも、衛生上のリスクは大きく減るはずだ、と自己満足しているのだが、、、。