人が集まる所には集まり、集まらない所には集まらない~デモンストレーターの仕事から見えてくる現代日本の課題

奈良県の某郡部にある量販店での仕事を打診されたのは、1ヶ月ほど前。
ここには十二年前に何度か行ったことがあり、そのつど店舗を取り囲む大らかで緑豊かな情景がとても印象に残っていたので、
「交通は不便だけれど、ま、空気もいいしな」
と、依頼を受けようと決めた。

念の為、店舗の最寄駅からのバス時刻をチェック。
とたんに、ガーン!
な、ないのだ! バスがないっ。
いや、あるにはあるのだが、本数が極端に少ない。
この運行状態では、メーカーが要求する「9時半入店で10時から18時まで勤務」は不可能だ。

ハァー(溜息)。十二年前には、こんなのではなかったのにな。確かに当時もバスの本数は少なかったが、ここまでひどくはなかった。
それだけ、この干支が一回りする年月の間に、ここいらの人口が減ったのだろう。ズバリ、過疎化が進んだのだ。

人が集まる所にはますます人が集まり、反対に、人が集まらない所にはますます集まらなくなっている。人口密度の二極化はひどくなるばかり。
デモンストレーターの仕事に長年たずさわっていると、たかだかバスの本数一つからでも、現代の日本が負わされている課題が見えてくる「瞬間」が、必ずある。