75歳の女性ドライバー

今日の現場は、滋賀県琵琶湖線側中部にある、某市郊外。
写真に近い場所にある、地域密着型のスーパーである。

一応は市が走らせているコミュニティバスの路線圏内ではあるが、
「土日はほとんど便がないですね。オタクらデモンストレーターさんは、ウチへ来るのには、皆、JR手原駅かJR守山駅からタクシーを利用してはりますよ。乗車時間? さあ? 交通状態によっては10分近くかかることもあるかも知れませんね」と、ご親切にも教えてくれたのは、当店に前日挨拶電話をした昨日の応対に出た、若い従業員さん。

そのアドバイスを受け、京都からの新快速が止まる守山駅でタクシーを待ち、通りかかったフリータクシーに乗る。
運転手は、年かさの女性。
一見して、60代前半。

車中、いろいろと話をした。
「ここいら、コミュニティバスが走っているそうですけれど、土日はあまり回数がないんですか?」
と私。もちろん、今日はたらく店舗への挨拶電話でそよ情報を知り得たことも伝えた。
「さあ? 私はバスに乗らないし、守山の人間ではないので、何とも。でも、おっしゃる通り、土日はほとんど走っていないと思いますよ、、、ああいうの、お年寄りの病院に行く回数に合わせていますから。病院は、土日は、基本、休みますでしょ」。

そのうち、話題は互いの職業やら労働状況やら。
「お客さんは、宣伝販売やったら、あちらこちら、まわってはりますの?」
運転手が尋ねる。
「ええ。関西を中心に、北陸や中部地方まで。面白い仕事やけど、体力的にはトシと共に段々しんどうなって、70歳でやめよう思うてますねん、、、立ち仕事は辛いし、年中仕事場も辛いし。ま、主人も自営やから、年金は僅かやし、そんなわけにいかないかも知れませんけれど」
私は答える。

一連のやりとりの中でで、私は運転手が75歳であることを知った。
「このトシでも使うてくれる会社に感謝感謝ですワ」
彼女は言った。
「やけど、今年いっぱいで辞めようと思うてます、、、運転は、いつまでも出来ることやないですから」。

目指す店の目指す箇所に着き、私を下ろす時、運転手は言った。
「ご乗車、ありがとうございます。頑張りましょうね、お互い」。
「はい、こちらこそありがとうございます。ホンマ、頑張りましょう!」。

仕事前から、ホンワカした気持ちになった。
ウン。頑張ろうね、運転して今日の現場まで運んでくれたアナタも運ばれたワタシも。

彼女も私も、いわゆる「勝ち組」ではない境遇にいるのだろう。
でも、それが何なのさ?
そもそも「勝ち組」「負け組」って、誰が決める?

この吠え。「勝ち組」に入らなかった者の遠吠えでは断じてない。
75歳女性現役ドライバーの、あのシャンとした姿、ものの受け答え、仕事への愛とプライド。
広く語りたい。

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