包丁さばき

試食販売の仕事をしていると、必ず、数ヶ月に一度の割でこんな人に出会う。

「料理に興味がないわけではないんだけれど、私は包丁がうまく使えないんで、どうしても台所仕事が億劫になるんですよ」。

わかるわぁ。
私も、手先がウルトラ不器用なこともあり、包丁がうまく使えないもの。
だから、例えば、スーパーの惣菜部門に勤めたら
「包丁が遅い。なのに切り方が雑」
とか
「とにかく、やることなすこと、すべてがトロい」
とか指摘され、そこのお局パートにすごくイジメられるタイプだと思う。

そんな私でも、敢えて発言させていただく。
「包丁がうまく使えないからって、卑屈にならなくていいのよ。あんなん、コツを覚えたら誰でも出来る。あとは場数」
と。

そうなんだよ。
このことに気付いたのは、youtubeの動画。
まあ、何でもアリね。キャベツの千切り、玉ねぎのみじん切りはもちろん、寿司の巻き方、米の研ぎ方他、基本的な調理技術はほとんど紹介されている。
しかも、率直な話、教え方か下手なアナログの先輩や教師や姑より、よほどわかりやすく、かつ科学的に解釈してくれる。
ネット上の教授だから、失敗したから、うまくいかないからって、怒られり笑われたりすることもないし。

平成の現在になっても、こんなに包丁がどうのなどという技術的なことばかり、それも理論の裏付けなしに単に見た目の出来栄えばかりで評価されがちなのは、かつての家庭科教育の技術偏重主義だと思う。

家庭科。大嫌いだった。
「何分でキャベツの千切りがどれだけ出来る」的な、技術ばかり問うんだもの。
これは、食物関連ばかりではなかった。

かつ、先生は
「(動作が)遅い」

「(動作が)荒い」
の、マイナス部分を指摘するばかりで、
「こうしたら、もっと速くきれいに出来るよ」
なんて、アドバイスしてくれなかった。
まして、
「こう切るのには理由がある。この方が美味しくなるから」
みたいに、理論を説明してくれることもなかった。

母親も忙しく仕事をしている家庭が珍しくなくなり、娘に料理を教える機会も少なくなった昨今。
私のように、
「料理は母からではなく書物やネットで覚えた」
という人、結構いると思う。
そんなタイプには、
「料理はカン。見て覚えろ」
なんて、ちょっとハテナマークというか、戸惑ってしまうのね。

包丁さばきも同じ。
「見て覚えろ」より、コツを科学的理論的に説明してくれた方が、こちらも納得がいくし、その時点で上達への道がひらけている。