取るに足りない、些細な「不正」も許せない性格

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極端な話、得意先とスタッフと相応に整った通信環境さえあれば、自宅の居間でも開業出来てしまう、人材派遣業。デモンストレーター界も例外ではない。
このことと関係あるのか?
規模の大小や株式個人の企業形態を問わなければ、全国津々浦々、星の数ほどあると思う。


関西では、その名を知るデモンストレーターは知っているであろう派遣会社に所属するオオタさん(仮名)。
彼女は、10年ほど前、同じ会社に所属する同じデモンストレーターに大変に不愉快な思いをした。


その日、オオタさんは、ある加工食品を宣伝販売すべく、精肉部門でデモンストレーションしていた(試食メニューが肉を使うものだったのだ。店にしたら、加工食品と同時に肉も売れれば嬉しい)。
安価で、味もそこそこ。しかも入荷量が少なめだったこともあり、担当する加工食品は定番コーナーも含め、午後3時過ぎには完売。


ここで、オオタさんは、派遣会社に連絡。
「今日、担当したメーカーさんの他の商品をデモして下さい」
との指示を受け、従った。


ところが、その商品も在庫があまりなく、5時半までには売れてしまった。
店側に確認すると、担当メーカーの商品は、他にはないと言う。
オオタさんは、また派遣会社に連絡。


「じゃ、お店の何かお手伝いをしていて下さい。肉のラッピングとか、加工食品部門での品出しとか」。
オオタさんは、店の精肉と加工食品、それぞれの責任者のところへ赴いた。


精肉部門責任者。
「いやー、ラップを手伝ってもらう言うてもなあ、ウチは今日のぶん(商品のこと)は(売場に)出してもうてるし。もう加工はせえへんねん」
加工食品部門責任者も、
「うーん? 手は足りてるしなあ」。


そこへ通りかかった店長。責任者2人の会話を小耳にはさんだのだろう。
「もう5時40分近くやがな。これから鍋を洗ったりゴミを捨てたりしていたら、片付けが終わる頃にはちょうど終業時間の6時になる。それでエエんとちゃうか。よう頑張ってくれたんやし」
と、言ってくれ、責任者たちも納得。
オオタさんは後片付けに取りかかった。


後日、オオタさんの携帯に、派遣会社の社員から強烈な苦言が。
「オオタさん、あなた、先日5時40分で仕事を切り上げて、オカタヅケに入ったらしいですね」
「えっ? あ、ああ。でも、店長さんも他のチーフさんたちも時間が時間だからいいと言ってくれて」
「駄目ですっ、絶対に! 就業規約にも書いてあるでしょ、夕方6時までは何があっても仕事をすると!」
「でも、その仕事がないって店に言われたんですもの」
「それを見つけるんです! とにかく、ただの20分でも終業時間より早く売場から離れたことはルール違反ですよ!」。


規約の上では正論には違いない。オオタさんは素直に謝った。
その上で、
「あのぅ、教えて下さい。どうしてこのことが会社にわかったんでしょうか?」。


「ホソダさん(仮名)が電話してきたんです」
と、派遣会社の社員は答えた。
「オオタさんが、5時40分頃から片付け始めていたと。あの日、ホソダさんは、あなたと同じ現場で仕事をしていたんです。いたでしょ、お肉売場の近くに、〇〇ドリンクの販売で」。


オオタさんの脳裏に、精肉売場の向かいのペットボトル売場で飲料をデモしていた女性の姿形が蘇った。
「ははぁ、あの女か。確かに、朝挨拶した時、私たち同じ会社やねと言うてたなあ」。


後にわかったことは、このホソダさん、同業者のほんの些細な「不正」を目撃するや、遂一、派遣会社に伝えることで、仲間から敬遠されていた人だったとか。
(不正とは、例えば、業務終了後に1本だけ余っていた試飲サンプルを捨てるのはもったいないとデモンストレーターが飲んだり、商品も完売したことだしと業務終了5分前に試食台を引いたり、お一人様に1個限り付けるとされている景品を「お姉さん、うちには孫が2人おんねん。景品が1つだとケンカになるから、もう1つくれへん? その代わりに(商品を)もう1つ買うから」などとおっしゃるお客様に景品を2個渡したりと、まあ、取るに足りないと言えないこともない、この程度の事柄)。


ホソダさんの指摘は正しい。そして、ホソダさん自身も悪い人ではないばかりか、同業者の不正(と言えるほどのものではないが)をいちいち会社に連絡する行為にも、恐らく含むところはない。
ただ、「やっていけないこと=ルールを破る」ということが、自他共に許せないタイプであるだけだ。


ホソダさん。
うーん、間違ってはいないのだが、こういうキャラ、私も苦手だな。
どうしてだろう?


写真は、1番下の孫。