「30の発明からよむ世界史」(池内了 監修、造事務所 編著)

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「30の発明からよむ世界史」(池内了 監修、造事務所 編著)


こういう本を読むと、あらためて
「人類って本当にすごいものなのだなあ」
と、祖先の偉大さに敬服したくなるし、今なお世界のそこかしこで起こっている事柄に対しても希望が持てるような気がする。
「常に創意工夫してモノを進化させ、新しい社会を作り上げてきた人類。きっと、うまくやる」
と。


約20万年前に出現した、我々の直系先祖のホモ・サピエンス。彼らは、装身具から食料、衣類、器、貨幣、交通や輸送手段としての乗り物と道路、相互の意思伝達や記録に欠かせない文字や紙その他、身の回りのものすべてに対し、
「より豊かに、より便利に、より生産的にするにはどうしたらよいか」
と、絶えまなく探求し、改良を重ねてきた。


例えば、車輪1つとっても、最初はコロ(丸太)で荷物を運んでいたが、そのコロを軸にして荷台に取り付けることを考えだしてそれが車輪となり、やがて乗り心地の良さを求めてゴムタイヤが開発された、というふうに。


結果、車輪に限らず羅針盤や眼鏡、電池もろもろの発明の1つ1つが、日々の生活はもちろん、産業構造や国家組織、すなわち歴史をも確実に変えていった。
本書は、発明品を切り口にした「世界史」でもあるのだ。


史書なのだから、ダイナマイトを発明したノーベルがノーベル賞を創設するにいたったいきさつや、アポロ計画でのフォン・ブラウン博士(ナチスドイツの元でロケットを製作。ドイツの敗戦色が強くなると意図的にアメリカに亡命)の厚遇など、歴史の「負」の部分もしっかりと説明されている。


なお、科学知識を要する記述も少なくなく、ページをめくりながら
「理系科目を毛嫌いせずもっと学んでいたらよかったな」
と、幾度となく思った。
きっと、理系の方が本書を読まれたら、文系の私とはまた違った感想を持たれることだろう。