何ともチグハグな一日

 日曜日は、滋賀県中部の野洲で、仕事。一昨年の秋に開店したばかりの、
大型ショッピングセンター内にあるスーパーが、現場だ。
 担当は、タケノコご飯のもと。
 売れ行きは悪くなかったが、何ともチグハグな一日だった。

 まず、京都駅から野洲を通る「普通列車米原行」に乗ろうとしたら、濃霧
の影響で、14分遅れで当車を運行中とのこと。
 思わず舌打ちしてしまった。
 野洲駅から店に行く交通手段は、9時5分に野洲駅を出発するバスしかない。
運悪くこれに乗り遅れたら、高い金を払ってタクシーに乗らねば、入店時間
に間に合わない。
 もちろん、タクシー代は経費として認められるが、返ってくるのは、ざっ
と一ヶ月後。当面の出費がかさんでしまう。

 それでも、遅れて到着した電車でも、どうにかバスに間に合いそうな算段
だったのだ。
 なのに、私は、何をぼうっとしていたのだろう。
 野洲を通り越し、近江八幡のそのまた向こうの安土まで行ってしまった。

 大急ぎで野洲まで引き返し、けっきょくタクシーに。 
 自らのミスが招いたことだから、この料金は、もちろん自腹。
 野洲駅から10分少々。
「やっぱりな」
 と思う金額だった。
 予定通りにバスに乗っていたら、280円ですんだのに。

 指示時間の5分前に、かろうじて入店出来、担当者に挨拶しようとしたら、
部門に誰もいない。
 今日のデモンストレーション商品であるタケノコご飯のもとは、確かに並
べてあった。
 POPもついていた。
 だが、肝心の電源が売場にない。

 尋ねようにも人がいないので、仕方なくバックヤードの調理室で、炊飯し、
保温専用ジャーに炊きあがったタケノコご飯をつめ、売場に運ぶことにした。
 これは、決定的に不利。
 ご飯系は炊飯に時間がかかる。
 だから、売場で炊飯し、匂いでお客様をひきつけることも、大切な売上手
段なのだ。

 午前十一時。やっと炊きあがった。
 と思ったら、まだ私はぼうっとしていたのだろう。
 気がつかないうちに、炊飯器のメニューを「早炊き」にしていた。
 三合炊きのわがミニ炊飯器では、普通の白米や無洗米は三合かっきりでも
「早炊き」で炊いてよいけれど、炊き込みご飯の場合は、種類によっては、
メニューを「普通」にするか、「早炊き」メニューで炊くなら米の量を二合
に減らさないと、おかしなことになるのだ。理由はわからないが、ご飯に少
し芯が残る。食べられたものではない(おそらく炊飯器のクセというやつだろ
う。オーブンにクセがあるように)。
 八月におこなった栗ご飯のデモンストレーションの時も、そうだった。

 今回も、当然、炊き上がりが固い。ほとんど捨てざるをえなかった。
 大いなる時間の無駄。

 二回目が炊きあがったのが、十二時半。
 一回目の炊飯の失敗を取り戻さんと、八月の栗ご飯実施時同様、ここは昼
の休憩時間も犠牲にして、デモンストレーション。
 現場に入った以上、一定の販売義務はあると思っているし、炊飯の失敗は、
これまた自分の責任だからね。

 幸い、タケノコご飯の味は大好評。
「僕、タケノコ嫌い」といやがる子どもにも
「タケノコは竹の子ども。土から芽を出し、上に高く高く伸びて、立派な竹
になるんですよ。それくらい栄養があるの。タケノコを食べると、僕、大き
くなれますよ」
 と薦め、食べてもらった。

 売上面では、まあまあ挽回出来たものの、後味の悪い日。
 繰り返す。
 気持ちに行動がついていかない、何ともチグハグな一日だったのだ。