るんるんるんでいこうじゃない

 いろいろあるけれど、るんるんるんでいこうじゃない。
 今日、私はそんな気になっている。

 昨日の現場は滋賀県甲賀郡は水口にあるスーパー。
 ここは、私がマネキンデビューをした、記念すべき店である。

 26日と28日に極度に冷気のきつい現場に立ったせいか、わが宿痾(しゅくあ)と
も言うべき腰痛が小康状態を捨ててまたも悪化。ついでに膝にもきた。
 昨日、左膝がむくんで腫れ上がり、予想された通り和式トイレに座れなくなっ
た。全身鏡の前に立つと、左右の膝の太さが違うのが一目瞭然。
 それでも仕事には行かなくてはならない。痛む足をひきずりひきずり、赴いた。

 担当はトマト。
 そのまま切って試食してもらう他、豚肉と炒めて卵で閉じる「トマ玉いため」
も提供する。

 トマトがプラムタイプという中途半端な大きさ(プチトマトを少し大きくした感
じ)だったこともあり、売上は今ひとつ。
 味付けに使うように指定された「トマ玉いためのもと」だけが、やたらと売れ
た。

 職務上、下にしゃがむこともたびたび。そのたびに痛みによろける私。何かに
つかまらないと起き上がれない。
 お客様の一人が、そんな私の「異変」に気づいた。
「おねえさん、足が痛いん?」

 七十代はじめの、どちらかと言えば派手めの婦人(化粧でそう見えたのか)だっ
た。
「いえ。あの、ちょっと、膝が腫れていて」
 答えた私に
「わかるわ。立ちっぱなしはしんどいよなあ。私もずうっと立ち仕事をしてい
たからな。ここんとこ、冷え込むし。膝はいったん傷めたら、なかなか治らへ
んでえ。でも、働かなあかん時は働かなあかんしなあ。大事にして、気張りや」
 と、実に思いやりのあるお言葉をかけて下さり、売れていなかったトマトを
二袋もカゴに入れて下さった。

 思わず、涙腺が緩んだ。

 日々、方々の店舗を転々とし、嫌な思いもたくさんしたけれど、それと同じ
くらい、否、その倍くらい、素晴らしい思いをさせていただいた。

 腰痛はつらい。膝通もつらい。
 それをじゅうぶん自覚しつつ、
「いいこともたくさんあるんだよ」
 と、るんるんるん路線でいこうと、私は思っている。