身体がスイーツを求める時

 仕事が終った後、カラダが異様に甘味を欲する時がある。
 
 心身共に綿のように疲れた時(これが一番多い)。
 何となく物悲しかったり寂しい時。
 頭が活火山になったがごとき腹立たしい時(これもかなり多い)。

 「甘いもの欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい」症候群の嵐に見舞われたら、私は、帰宅すると即キッチンに直行し、冷蔵庫や戸棚をごそごそ探り始める。
 甘味を求めるカラダをなだめるため、ありあわせのものでスイーツを作るのだ。
 食事の前に、否、晩酌の前に、まずスイーツというわけ。

 よく作るのが、ピーナッツバタースコーン。小麦粉と全粒粉とベーキングパウダーと砂糖とピーナッバターと牛乳があれば、15分で出来る。オーブンもいらない。トースターでじゅうぶん。

 ホットケーキミックスを利用したクレープ。これもフライパン一つ。ジャムをはさみ、パウダーシュガーをまぶすのが、私流。

 チョコバナナ。レンジで溶かしたチョコレートをバナナの輪切りにからめる。

 バルサミコアイスクリーム。何のことはない。バニラアイスクリームにバルサミコ酢をたらすだけ。ちょっと大人の風味。

 ウィンナコーヒー。生クリームを泡立てなければならないが、ハンドミキサーを使えば簡単。
 砂糖を多めに加えたコーヒーに入れ、シナモンを振る。

 ミルクシェーキ。ミキサーで牛乳と卵と砂糖とバニラエッセンスを撹乱させれば完成。

「わざわざ作らなくても、ちょっとコンビニに走れば、美味しいお菓子をたくさん置いているじゃないの」
 とおっしゃる方がいるかも知れない。
 我家の近くにもローソンがある。自転車に乗れば二分とかからない。
 
 それなのに、もともと超がつく出不精の私は、この「二分」が面倒くさいのだ。
仕事帰りに立ち寄るのもわずらわしい。
 いきおい、
「ええい。自分で作っちゃえ」
 と、こうなる。

 プラス、手間暇をかけないクイックスイーツでも、「作る」からには一応は手も目も頭も使う。
 これがいいのだ。
 材料を計量したり、調理器具をいじっているうちに、
「甘いもの欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい」が「甘いもの欲しい欲しい欲しい」くらいまでに落ち着いてくる。
 肝心のスイーツが出来上がる頃には、さらに「欲しい」が二つくらいまでにトーンダウンしている。
 結果、食べ過ぎない。
 お金もかかり過ぎない。

 ロックの神様と呼ばれたプレスリーは、晩年、過酷なスケジュールをこなす疲労とストレスから、ドーナツやピーナッツバターサンドイッチなどのスイーツを大量にとるようになり、体型が激変してしまった。
 私は、彼がスイーツを求めた気持ちを理解しつつも、もし自分で作って食べていたらあんな結末にならなかったであろうにと、残念に思う。

 現に、自分でパンを焼いていた、やはり大スターのジョン・レノンは、ずっとスリムだったね。
 つんくも、急におなかがすいた時は、さっとうどんなどを作るそうだ。