チェックインし、シャワーを浴びて一息つこうかとも思ったが、せっかく異郷の地(というほどでもな
いけれど。京都と岐阜は近いものだ)に来たのだもの。それに、陽は高く、くつろぐにはまだ早い。持参
した半袖シャツに着替え、町探索をせんと、外に出る。
頼りは、ホテルの部屋に置いてあった、太田市の地図。
お寺を二つ、万尺寺と祐泉寺をまわった後、中山道へ。
ここは、江戸の日本橋から数えて51番目の宿場町。今なお江戸や明治時代からの建物が残っている。
昭和の始めごろまでは遊郭もあり、道を行くと琴や三味線の音が聞こえてきたそうな。そんな宿場町
を支えてきた老舗の酒屋御代桜に入る。
店内スペースは四畳半ほど。中央に試飲のための縁台みたいな椅子が置かれ、棚にこの酒屋で造られ
ている地酒や地焼酎が無造作に並べられている。
流れる音楽は、琴や三味線ではなく、モダンジャズ(ここの店主はきっとジャズが好きなのだろう。
地図には、この春にプロミュージシャンをよんで酒蔵でジャズオルガンのコンサートを催したと紹介
されていた)。
くつろいだ雰囲気の中、じっくりと土産に持ち帰る地酒を選んだ。
そば道場なる、ちょっと目には見逃してしまいそうな店もあった。
派手な看板が出ているわけでなし、外観も昔ながらのたたずまいで目立たない。
「そばを手ずから打って食べる」
ということを売物にしており、家族や友人たちとグループになって行くと楽しそう。
そば打ちは一度体験するとハマると言うしね。
軒先に水車がある店、太田名物「鮎の甘露煮」を売っている店、卓上の水琴窟が目印の店などなど、
あちらに顔を出し、こちらにちょっかいを出しているうちに、夕方。
締めは、木曽川べりの堤防散策だっ。
川の流れる風景。
それだけでロマンを感じる。
わけても、岐阜県には海がない。重要な産物はすべて川を利用して輸送されたことだろう。
川と共に人々の生活が刻む「歴史」も、流れてきたのだ。
暑い日だったが、川の近くは幾分涼しい。
しゃがんで草むらを眺めてみれば、大好きな虫もぶんぶん。
一時間ほど川を前にぼうっとしていた。