美濃加茂レポート その3

午後三時過ぎ。ホテルがある美濃太田駅に到着。
 チェックインし、シャワーを浴びて一息つこうかとも思ったが、せっかく異郷の地(というほどでもな
いけれど。京都と岐阜は近いものだ)に来たのだもの。それに、陽は高く、くつろぐにはまだ早い。持参
した半袖シャツに着替え、町探索をせんと、外に出る。
 頼りは、ホテルの部屋に置いてあった、太田市の地図。

 お寺を二つ、万尺寺と祐泉寺をまわった後、中山道へ。
 ここは、江戸の日本橋から数えて51番目の宿場町。今なお江戸や明治時代からの建物が残っている。
 昭和の始めごろまでは遊郭もあり、道を行くと琴や三味線の音が聞こえてきたそうな。そんな宿場町
を支えてきた老舗の酒屋御代桜に入る。

 店内スペースは四畳半ほど。中央に試飲のための縁台みたいな椅子が置かれ、棚にこの酒屋で造られ
ている地酒や地焼酎が無造作に並べられている。
 流れる音楽は、琴や三味線ではなく、モダンジャズ(ここの店主はきっとジャズが好きなのだろう。
地図には、この春にプロミュージシャンをよんで酒蔵でジャズオルガンのコンサートを催したと紹介
されていた)。
 くつろいだ雰囲気の中、じっくりと土産に持ち帰る地酒を選んだ。

 そば道場なる、ちょっと目には見逃してしまいそうな店もあった。
 派手な看板が出ているわけでなし、外観も昔ながらのたたずまいで目立たない。
 「そばを手ずから打って食べる」
 ということを売物にしており、家族や友人たちとグループになって行くと楽しそう。
 そば打ちは一度体験するとハマると言うしね。

 軒先に水車がある店、太田名物「鮎の甘露煮」を売っている店、卓上の水琴窟が目印の店などなど、
あちらに顔を出し、こちらにちょっかいを出しているうちに、夕方。
 締めは、木曽川べりの堤防散策だっ。

 川の流れる風景。
 それだけでロマンを感じる。
 わけても、岐阜県には海がない。重要な産物はすべて川を利用して輸送されたことだろう。
 川と共に人々の生活が刻む「歴史」も、流れてきたのだ。

 暑い日だったが、川の近くは幾分涼しい。
 しゃがんで草むらを眺めてみれば、大好きな虫もぶんぶん。

 一時間ほど川を前にぼうっとしていた。