派遣会社が予約しておいてくれた美濃太田市のホテルにたどりついたのが、十一時過ぎ。当日七時まで
大阪と京都の境目にある水無瀬で仕事をし、その足で美濃に向かったのだ。
上がりの新幹線内は、自由席ながらじゅうぶんに空席があり、ゆったり。いかにも出張帰りといった感じのビジネスマンがほとんどで、大半は缶ビールや缶チューハイを片手に談笑していた。
私もあやかりたかったが、その日の水無瀬での仕事レポートを翌朝までに派遣会社にファクスしなければならない。目を凝らし、報告書にペンを走らせた。
新幹線は名古屋で下車。在来線で岐阜に向かい、岐阜から高山線に。辿り着いたホテルでチェックインをする時、社内で書き上げた報告書をホテル従業員にファクスしてもらった。
一枚30円はコンビニの50円と比べると良心的な値段ね。
同時に、午前五時にモーニングコールをしてくれるよう、たのんだ。
七時半に入店するには、美濃太田を始発で経つ六時二十六分の電車に乗らねば間に合わない。
風呂に入り、翌日の準備をすると、酒も飲まないのに瞼がふさがってきた。
モーニングコールをたのんでおいて正解だった。
しつこく鳴り響く電子音に、はっとして起きたのが、真実のところだったから。
ひそかに持ち込んだ(!)、牛乳と青汁を飲み、身支度をして、六時きっかりにホテルを後にした。
まだ暗い。
美濃太田の駅構内のベンチで若い男性がコートを布団にして寝ていた。
ホームレスの雰囲気ではない。きっと、ホテルの部屋がとれなかったのだろう。
ホームで十分ほど待っていると、長良川鉄道始発が滑り込んできた。