海外に行こう

さて、本当に出かけよう。
 途中で派遣会社Bに電話をかけようか。

「仕事、ありませんか? 遠方でもいいです。紹介して下さい」

 携帯ショップにも寄り、不要な機能を外してもらおう。

 二月のギャラ支払い額の少なさ。
 やがてキャッシングが出来なくなるのに、貯金額が片手金額の心細さ。
 おまけに、十月三十日に実施したデモのギャラと立替金、メーカー締めの関係で、一月末日になるそ
うな。
 十月三十日に仕事をして、年明けの一月末日に支払いですよ。

 大手メーカーのあの支払いも向こうのミスで半月も支払いが遅れたし、振り返れば、年末からイライ
ラしているなあ。
 節約は出来ても、払うものは払わないといけないからなあ。
 些細なことでカッとなる自分がいる。

 酒を寝酒だけにすれば、酒代は大きく浮く。
 そのぶんを貯蓄にまわせば運転資金は一年あれば作れる。

 その一年間は原稿書きと読書といこう。
 何より、自分の欲望を抑えるという自信がつくやね。

 大好きな酒をやめて作ったお金の一部で、そうだ、海外に行こう!
 家族と行くのではない。
 一人で行く。
 家族といっしょなどと言っているといつまで経っても行けないし、行きたいところにも行けない。

 ネオ禁酒の楽しみが出来たぞ。
 仕事の資金をためるだけが目標なら、とても続かないはず。
 冷蔵庫みたいなところで売上をつつかれながら仕事をして、帰宅して飲む酒は、無上の喜びだから
だ。

 行こう。
 本当に行こう。
 キャッシング返済が残っていてもいいじゃない。

 行き先は中国かオーストラリアだ。
 どちらにもメールフレンドがいる。