その日はうどんのデモ。グリル鍋でゆがいたうどんを試食カップに入れ、だしはポットに温存。お客様
が通りかかったら、カップにだしを注ぎ、刻みネギを散らして提供していた。
えへらえへらと奇妙な笑いを浮かべたおにいさんが通りかかったのは、十時半過ぎ。
とつぜんポットのふたを押した。そのポットはメーカーが用意したものでロック機能はなし。沸騰した
お湯は勢いよく飛び出て、販売員の私を直撃した。
「あぶないっ」
とっさに顔をおおったその手に湯がかかった。
すぐに冷水で冷やしたため、大事にはいたらず、業務も遂行出来た。
冷やすのを手伝ってくれた同業のおばちゃん。
「あんたにこんなこと言うの何やけど、お客さんに当たったんでなくてよかったなあ」
本当だ。
お客さんに熱湯がかかっていたら、私は責任を問われ、下手をすると倍賞問題に発展しただろう。
不特定多数の人に接するマネキンには、こういう危険もある。