入店店舗を間違え、日当がパーになった同業者。

入店店舗を間違えるという大ポカをやらかした私だが、救いだったのは、デモンストレーションをスタートあるいは準備する前にそのポカに気づいたこと。
もしもう始めていたら、大変だよ。
実は、知り合いの同業者が、何年か前にそれをやらかした。

当日、某大手量販店にて、ご飯系のデモンストレーションを実施することになっていた彼女。
米をとぐ時間が省ける無洗米を使っても炊飯には小一時間かかることを見越し、定められた時間より50分も早く入店して作業にとりかかった。
炊飯器の湯気が立ち始め、さあいよいよご飯が炊き上がるぞという時、試食準備室の戸がガラリと開き、店の担当者が入ってきた。
「おたく、店、間違えてへん? 〇〇(その日に彼女がデモを請け負う米のメーカー名)から来ましたって、さっき別の人が挨拶にみえたんやけどなァ。指示書を見せてもらったら、確かにウチなんや、、、」。

まさかと思いながら、彼女はエプロンのポケットに手を突っ込み、メニューレシピや報告書と共にたたんでいた指示書を取り出した。
「△△店と書いていますが?」
「ああ、それ、別の店や。ウチは△△駅前店やねん」。

「知らんかったワ。△△駅で売店の人に△△店はとこですかと聞いたら、ここを教えられて。途中の道でも何人かの人に尋ねたけれど、皆、この店を教えてくれはった」。
後々、彼女はこう私たちに語ったものだ。

ともあれ、間違いを知った彼女は、ただちに派遣会社に連絡。入るべき△△店にも電話を入れて詫び、大慌てで荷物をまとめて△△駅前店をあとにした。
炊き上がる寸前だったご飯は、もちろんそっくり捨てた。

△△駅前店と△△店は、名称は似ていても、実はそこの市の南と北と、まるで反対方向にある。
しかもバスでしか行けず、そのバスも通勤通学の時間帯を過ぎた朝の9時台には便がない。
仕方なく、彼女はタクシーで駆けつけた。

「間違えて入った△△駅前店で試食用に買った米とミネラルウォーター、次に入った本来の△△店に行くタクシー代、全部自腹や。まあ、こちらが悪いんやからしゃーないわな。でも、日当がその二つで飛んでもうた上に、△△店の入店が遅れたぶん残業になって、ホンマ、情けない日やったワ」。

彼女にとって不運だったのは、地元の人は△△駅前店をも日常的には△△店と呼ぶことだったね。
いや、あるのよ、そんなケース。
例えば◇◇店も新◇◇店も、土地の人は同じ◇◇店と口にしているとかね。

こんなふうにみていくと、やはりデモンストレーターが入店時にエージェンシーなり派遣会社なりに確認連絡をすることは、大切だよなあ。
不幸にして間違えて入店した場合でも、そこでわかるからねえ。