あごだしネタをもう少し。
私が、この今や「ブームの旬」とも言えるあごだしの宣伝販売を初めて請け負ったのは、2012年の春先だったか。
トビウオの旨味がぎっしりと詰まったあごだし。まだまだ知られておらず、宣伝はともかく、販売には大いに苦労した。
試食メニューはだしの味が一番よくわかるお吸い物で、それは試食(試飲)されたお客様のほぼ全員が
「あっさりしているのにコクがある。美味しいね」
と、プラス評価を下さったことからもわかる。
それなのに、プライスカードを見るや、これまたほぼ全員が
「高いなぁ、、、」
と眉をひそめられる。
ついで、
「だしなんて、毎日使うものやさかいにな」。
デモした店舗が地域密着型の小ぶりな店舗だったこともあり、販売数はメーカーが示した目標数字(事実上のノルマ)ギリギリの20。
宣伝は大成功でも販売はそうではなかった典型だった。
半年後。またあごだしを担当することとなった(実はそれまでにも幾度となくこの仕事を打診されていたのだが、何やかんやと口実をつけ、逃げていた。ちなみに「逃げていた」デモンストレーターは、仲間と情報交換した結果においては私だけではなかった)。
店舗は前回と同じチェーンの、これはやや都会というほどではないにしろ、一応の規模を持つ町の駅前。
デモを始めてアレッと感じたね。
違うのだ、お客様の反応が。
販売に苦慮する点では前回と同じだけれど、それでも、明らかにどこかが「ひらけて」いる。
「嫁はんが長崎出身でな」
私が差し出したお吸い物を試飲し、商品を買って下さった高年の男性が言った。
「嫁はんの実家に行くたびに、あごだしの吸い物をよばれたもんや。懐かしいなあ、、、嫁はんの両親はもちろん、嫁はんの兄貴夫婦も亡くなり、その子どもたちは長崎を離れているんで、もう長崎に行くこともない。でも、こうして関西の普通のスーパーであごだしが味わえるようになったとはなあ。時代は変わるんやなあ」。
確かに時代は変わる。
同時に、6年前よりずっとSNSが発展した今日では、個々のノスタルジーが商品としての市民権を得る=ブーム化されるスピードも、ずんずん速くなっているようである。