摂食障害の試食魔~黄金バットおばさん

ダイエットネタにもう少し付き合って下さいね。

昨日の記事で、15年間この仕事をしてきて男性のお客様からカロリーに関する質問を受けたことは一度もない、と書いた。
この事実。いわゆる摂食障害(拒食症や巨食症、過食嘔吐、過食後に下剤乱用など)を患うのは女性に多いことと、どこかで関係があるのかしら?

人気歌手、カレン・カーペンターの死因として、日本でも一般に知られるようになった摂食障害。「痩せたい」願望がつのり、過剰なダイエットとそのリバウンドを繰り返した結果、心までも破壊され、最悪の場合は死をも招く、怖い病気の一つだ。

実は、私が仕事でよく訪れる大型スーパーの一つに、摂食障害者ではないかと想われる女性がいる。我々デモンストレーターの間では知るぞ知る試食魔のおばさんだ。
「えーっ? 摂食障害って、太りたくないんでしょ? だったら、試食の食べ歩きなんかしないんじゃない?」
と首をかしげるあなた。
お忘れになっては困ります。摂食障害を患うと脳のコントロールが出来なくなることを。
これについては、やはり摂食障害に苦しんだ元フィギュアスケート選手の鈴木明子選手も某雑誌のインタビューで明言している。

くだんの摂食障害かと疑われる試食魔おばさん。
パッと見で、普通から大きくずれていると判断出来る。
細いとか痩せているとか、そんな次元ではない。まるでカカシを通り越え、骨に皮が張り付いているだけの針金体型。よくあれで立って歩けるもんである。
もちろん(?)、顔は?がこけ、眼は落ち窪み、理科実験室のガイコツとエエ勝負。

こんな外見ながら、このおばさん、実にアクティブに試食をしてまわる。あちらのラーメン、こちらのステーキ、そちらのアイスクリームという具合。
その軽やか、かつ、こちらが「ちょっとお客さん、いい加減にして下さいよ」と懇願するスキを与えぬ立ち居振る舞いには、かつて子どもたちのヒーローであった、「ワハハハハ」の高笑いと共に洞窟から空に繰り出した黄金バットを彷彿させる風情があり、ある意味で迫力満点。

黄金バットおばさん。食べ歩いた試食、果たしてそのままお腹におさめているのかしら? それとも、摂食障害の人に時に見受けられる、食べた後での嘔吐?
あくまで私の想像だが、前のケースではないか。
一人分の試食の量なんてわずか。
仮に10種類の試食を3回摂ったとしても、吐くほどの量にはなりませんわな。
だとしたら、これまた私の想像である。黄金バットおばさんは、試食で1日の食事をまかなっているのだ。

摂食障害。病院に行くほどではなくても近い症状になった人は、実はけっこう多いのではないか。
女性誌のダイエット特集に、時として素人判断でも無謀と感じられるダイエット法(1日500カロリーダイエットなど。まあ、理屈の上では続けたらダイエット出来るだろうけれど)が掲載されることも、それをあらわしている。

ただ、以前の記事でも指摘した通り、世の大半の人は意志が弱い。
「絶対に何キロ減量する!」
と意気込んでダイエットを始めても、三日もすれば、
「おなかすいたなぁ。食べたいなぁ。我慢できないなぁ。ま、今回はエエか。美味しいもの食べて、ゆっくりして、またダイエットしよ」
となり、いつのまにやらウヤムヤ。
これ、良いことなのか。悪いことなのか。

そもそも、いつの頃から「痩せている方が美しい」なる基準が生まれ、市民権を得たの?
ミニスカートの女王、ツィッギーの人気が世界的に沸騰した60年代後半から?

なお、私と同世代であろう閉経まもなくの女性は、加齢や更年期も重なり、ダイエットはダイエットでも、従来のそれとは別の要素を抱え込んでいる。
これについては、次回から、また少しずつ述べたい。