仕事関連のモノはダンシャリしやすい


ダンシャリ出来ないけれど、物理的にも、時には心を鬼にして決行しないといけない。

親の遺品に比べると、仕事関連のモノはダンシャリしやすいね。

試食試飲に使うカップや皿、フォーク、スプーンなどを私たちマネキンの自宅に送ってくるメーカーも少なくないが(と言うのは、デモを実施する店舗送りにすると、往々にして行方不明になってしまうからなのだ。店舗の裏側は、それこそモノで溢れかえっている。見つけにくいし、たまにとんでもない部署に行っていることもある)、多い目の数を梱包しているのが常だから、デモで使用した後もどうしても余る。
その余ったぶんは、試食試飲が野放図に多い店舗に行かなければならない時のためにプールしているのだけれど、限度がある。定期的に
「ダンシャリ」しないと、床が抜けてしまう。

店名は明らかに出来ないが、私は、大阪南部の某店舗に仕事に入る時はいつも自宅に余っているカップを持参することにしている。
そこは、従業員全員に手洗いとうがいを徹底しており、試飲用のカップはサイズ的にうがいにピッタリなのだそうな。

きっかけは、その店舗で飲料のデモンストレーションを実施した後、余った試飲カップを捨てようとしていたら、店長に声をかけられたこと。
「それ、ほかすん? やったら、いただけないかな」。
事情を聞いた私は納得した。
余った試飲カップ。そのまま捨ててしまえばただのゴミ。でも、従業員さんのうがいに使ってもらえば、店舗の衛生管理に貢献する。カップも浮かばれるというものだ。
おまけに、こちらは、そこで仕事をするたびに
「一番きれいな試食台を使ってくれていいよ」
と言ってもらえるなど、ささやかな「見返り」もある。

試食皿も店舗によっては喜ばれる。
賞味期限間近の食品を、廃棄するにはしのばず無人試食を実施する店舗はたくさんある。その際、食べ物を乗せる皿はホイルケースが主。
ホイルケースの値段は知れているものの、金を使うことには変わりない。マネキンにわけてもらえたらタダだわなあ。ホイルケースよりは試食皿の方が丈夫で、見栄えもいいし。

スーパー内で調理指導するキッチンアドバイザーも、こちらがいらない試食皿やフォークを「自由に使って下さい」と渡すと、ニコニコする人がほとんど。私たちへの態度も変わってくる。
「ちょっと! ニラの残りは別の袋にきちんと口を縛って捨てて下さいね。いやな匂いがするからっ!」
と、噛み付かんばかりに接していたのが
「何時までは私は流しを使いませんから、どうぞお好きにね」。
こうなる。

想うに、仕事関連のものがダンシャリしやすいのは、それが現在進行形で、思い出だの名残りだの、理性では処理出来ない非合理的な感情が入り込む余地がないからだろう。