「黒衣の女〜ある亡霊の物語」(スーザン・ヒル原作、河野一郎 翻訳)

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(注)12月5日に書いた記事。ら

 

"The Woman in Black"(Aushor  Susan Hill, Translator  Ichiro Kono)


邦題「黒衣の女〜ある亡霊の物語」(原作 スーザン・ヒル、翻訳 河野一郎)


基本的に怖がりで、幽霊や化け物が出てくる怪談はもとより怨念に満ち満ちたタイプのミステリーも苦手なら、多分に呪術的要素を持ち超自然現象連発のオカルトもダメ、ましてホラーなどとんでもない派の私だけれど、なぜかしら時折り「不気味な」オハナシを読みたくなるんだな。


これもそう。イギリスの湿地帯にある某田舎町を舞台に、過去と現在を行きつ戻りつ展開される1人の女の愛憎物語を通じ、作者は読む者に素朴な疑問と不安をジワジワと感じさせながら恐怖度を段階的に高めていき、アッと驚く結末でその頂点に達する、という見事な手法を用いている。
素直に怖い。


(あらすじ)
若き弁護士アーサー・キップスは、勤務先のボスに命じられ、とある湿地帯に住むドラブロウ夫人の遺産整理のため、霧深い11月のある日、その地を訪れる。
夫人が残した膨大な書類に目を通すため、アーサーは夫人が1人で暮らしていた館に泊まりこんで仕事を始めるが、時折り黒衣をまとった女が現れ、同時に奇怪な現象が相継ぐのだった、、、。


長らく絶版となっていたこの本、10年前の映画化(コメント欄に予告編をアップ)を機会に、ハヤカワから再刊されたとか。
原作もさることながら、自然な日本語でつづられた翻訳文も素晴らしい。

障害者手帳交付を申請して1ヶ月

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(注)12月2日に書いた記事。

 

12月1日から仕事復帰した夫。ダブル・ストーマ着用者になったからとて、それを交換する手間がかかるだけで、あとは特に支障はきたしていないとのこと。

まずは、「よかった!」の一言である。


もっとも、この交換が、いぜんとして面倒に感じられることも事実。

ストーマが2つのせいか、あるいはまだまだ慣れていないせいか、ざっと小一時間はかかる。

 


他にもいろいろあり、また年齢的なことも手伝い、今後はがんを患うまでのような働き方は出来ないな。

カラダと相談しながらのゆったりペースとなりそう。

 


妻の私もサポートに時間をさかねばならないから、やはり仕事を減らさざるをえない。

もう月に10日が限度だろう。

 


今年の11月が想定外に暖かかったことと、夫の入院退院関連の所用が続いたこと、この2つの理由で、実は我が家はまだ何ひとつ冬支度をしていない。

昨日よりボチボチと始めたところだけれど、目の前の物質的な冬支度もさることながら、年齢を考えた精神的な冬支度もスタートさせねばならない。

 


写真は、京都は烏丸御池にある池坊会館。

すっかりクリスマスモード、すなわち冬期に入っているディスプレイだが、人生の終わりにおいても、こういう楽しい冬を迎えたいものだね。

 

障害者手帳交付を申請して1ヶ月

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(注)12月2日に書いた記事。

 

夫の障害者手帳交付を申請して、今日で1ヶ月。区役所の福祉課の説明では障害認定の可否はおおよそ2ヶ月前後かかるらしいから、認定されてストーマ代補助その他の特典を受けられるようになるのは、まだまだ先のことになりそうだ。


もっとも、1日も早く認定して欲しいのが本音だわ。
ストーマ。高いのよ。プラス、夫は膀胱も除去したからそちらのストーマも必要で、通常のオストメイトの倍、費用がかかる。


あと、ストーマ付属品と就眠用特別マットをはじめとする諸々。
財布からお札が飛ぶ勢いで消えていく。


写真は、晩秋の我が町、京都。

「シェフ 三つ星フードトラックはじめました」(2014年、アメリカ)。

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(注)12月1日に書いた記事。

 

邦題「シェフ 三つ星フードトラックはじめました」(ジョン・ファブロー監督、2014年、アメリカ)。


(あらすじ)
ロスの高級料理店でシェフをつとめるカールは、有名グルメ評論家の来店に、自信がある、自らの創作料理を出そうとする。が、オーソドックスなメニューにするようにとのオーナーの指示を受け、渋々したがう。
評論家はツィッターで酷評し、カッとなったカールは、まだ慣れないツィッターで評論家に汚い言葉で反論。しかも、再来店した評論家に食ってかかる様子を、その時に店にいた客の1人に動画でとられて拡散され、店をクビになったばかりか、どこからも雇ってもらえなくなる。


失意のうちに、元妻イネスの勧めで、イネスとカールとの間に生まれた息子のパーシー(離婚後はイネスと暮らしている)の3人でフロリダのマイアミに。そこで、キューバ・サンドイッチを食べて美味しさに感動したカールは、これをフードトラックで移動販売することを思いつく。
かくして、カール、パーシー、さらにカールの元同僚のマーティンも加わって、サンドイッチ・トラックは発進したのだった、、、。


心温まる名作。画面に登場する多くの料理(食いしん坊なら観ているうちにお腹が鳴ってくるほど)およびそれらを介しての人と人との交流を通じて、身近な者への愛情や友情をも、今一度かんがえさせられる。


尚! ストーリーの進行に合わせて挿入される音楽も、料理の描写同様に素晴らしい。

 

画像は、ソニー・ピクチャーズより。

食べられなかったものが食べられるようになると、世界が変わる〜糠漬けのエピソードに寄せて。

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(注)11月30日に書いた記事。

 

夫の、入院手術を受けた病院とは別に通っている漢方診療所での診察に付き添い、今そこの待合室にいる。

狭い部屋に漂う、恐らくは漢方薬の素材となっている草の匂い。

これは、現在65歳の私が、小学校に上がる前にちょくちょくお世話になった、村にただ一軒あった薬屋さんの匂いだ。

古めかしくも、懐かしい、あの匂い、、、。

 


物心つく頃から胃腸が弱く、頻繁に下して、そのたびに医院や薬屋と仲良くしてきた割には、消毒液や薬品の匂いはトラウマになっていない。

それなのに、どうして、昭和40年半ばくらいまでは地方の農家の台所では必ずと言ってよいほど漂っていた糠漬けの匂いに、大人になった後も引きずるほどの抵抗を感じるようになったのだろう?

 


もっとも、そんな同世代は、実はけっこういる。糠漬けの宣伝販売の現場でも、何人もお目にかかった。

滋賀県中部の某ローカルスーパーで会ったお客さんもそうだった。

「昔の田舎の糠漬けは、言葉ではあらわせられないニオイがしてね」

その人は話し始めた。

「あのニオイだけでアウト。きゅうりやなすびの糠漬けも大根を漬けたたくあんも大嫌い。それを食べられるようにしてくれたのが、嫁さんなんや」

と、横にいた奥さんを視線で指した。

 


奥さんがご主人に代わって続けた。

「私はいちおう栄養の学校を卒業しているので、糠漬けなんかの発酵食品の良さはアタマでも知っていたんですよ。それに、実家の母親が漬物作りが得意で、子ども時代からその美味しさに触れてきた。これは、ぜひ主人にも食べてもらおうと」。

 


奥さんがまずしたことは、要はニオイが原因で糠漬けを口にする気になれないのであればそのニオイを気にしなくてすむようなレシピを考えること。

「おねえさん(私のこと。関西では、しばしば相手のことを、若くはなくても「おにいさん」「おねえさん」と呼ぶ)、1度たくあんを入れたチャーハンを作ってごらん。ごま油でたくあんを炒めたらニオイは気にならなくなるし、たくあんから出た塩分で味付けも最低限ですむ。ポリポリして、いくらでも食べられるで」

他、きゅうりやなすびの糠漬けは握り寿司のネタにもなるし、キャベツの糠漬けはヨーグルトで和えるとサラダ風になるし、きゅうりの糠漬けやたくあんはごま油と相性がいいので炒め物にしても、、、と、いろいろ教わった。

 


一連の会話の中で、特に印象に残っている、ご主人の一言がある。

「食べられなかったものが食べられるようになると、世界が変わる」。

そうなんだよね。たかが食べ物1つでも、確かに変わるんだよね。このことは、宣伝販売の仕事に就くまで糠漬けと鶏肉が食べられなかった私は、身に染みている。

 


最後に、繰り返しにはなるけれど、あらためて問う。

昔の田舎の糠漬けって、なぜ、あんなにクサかったのだろう?

 


写真は、烏丸今出川交差点にて。

秋も今日で終わり。

たくあん漬にいい時期だね。

 

糠漬けに思うあれこれ

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(注)11月29日に書いた記事。

 

子どもの頃は大嫌いだった糠漬けが食べられるようになったのは、たまたま就いたこのデモンストレーター業が私にもたらした功績の1つだろうか。

 


とにかく、あのニオイが耐えられなく(昔の糠漬けは、はっきり言ってクサかった。それゆえ、口にする気にはとてもなれなかった)、一種のトラウマにまでなってしまっていた私。

当然、デモンストレーターになってしばらくの間は、糠漬けを宣伝販売する仕事を打診されても、決して受けなかった。

 


もっとも、デモンストレーター歴も2年3年となると、

食物アレルギーの有無は別として、単なる食べ物の好き嫌いだけで仕事を選ぶわけにはいかなくなるのね。

しぶしぶ、本当にしぶしぶと某社の「糠漬けのもと」の宣伝販売を担当したのは、デモストレーター3年目のことだっか。

 


「一晩で漬かる」。

「毎日かきまぜなくてもよい」。

「におい控えめ」。

この3点が主なウリの当糠漬けのもとに、自宅できゅうりを漬け込み(自宅調理手当あり)、現場に持参して、お客様に試食していただく。

もちろん、試食に出す前、自分でも味見する。

 


「おや?」

口に含んだ私は、思わず心でつぶやいていた。

「まろやかさが加わって、けっこうイケるやん。あの糠漬け特有の匂いもないし」。

こうして、私は糠漬けを見直した。嬉しいことに、この時の仕事で、私は糠漬けが酒のつまみにもぴったりなことを知ったのである。

「ならば、自分でも漬けてみようか」

と、まずは、生協の宅配で、冷蔵庫にも入るサイズのホーロー製の糠漬け容器を購入した。

 


あれから十数年。糠漬けは、すっかり我が家の食卓に溶け込んだ。

現在では、りんごやキウイ、パイナップルなど、酸味の強い果物を漬けるフルーツ糠漬け(写真)にはまっている。

これが、美味しいの何の。きっと、小さな子どもにも受けるだろう。

 


それにしても、幼い頃の体験による刷り込みの恐ろしいことよ!

糠漬けの宣伝販売は、その後も何度か担当したが、現場では決まってかつての私のように匂いが原因で「アンチ糠漬け」になってしまった人に幾人か出会った。

実際、昭和な時代の、特に田舎の糠漬けのニオイは強烈だった。覚えておられる方も多いだろう。

 

 

反面、個人的感情だけれど、人生も秋期を迎えたこの年になってみれば、あのニオイは、ある種の郷愁をも伴って思い出されてくるのだ。

 

 

 

高額の立替金を伏せての仕事依頼〜こんなん詐欺に近いやん。

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(注)11月29日に書いた記事。

 

昨日の午前中、複数登録している派遣会社の1社から、電話がかかってきた。
仕事打診だった。


口頭で内容を確認し、
「これなら」
と、依頼を受けた数分後に、派遣会社がが送ってきたメールに添付されていたファイルを開いて愕然。


それは、派遣会社にくだんの案件を振ったエージェンシーからの依頼書のコピーで、筆頭に、デモンストレーターとして私の名前が派遣会社の人選係の手書きで書かれている。


画像を下にスクロールしていって、「注意事項」の欄まで来た時、
「まさか!」
と目を剥いた。
こう記されていたのだ。


「この仕事は、立替金として平均2万円は必要。多い目に準備しておいて下さい」。


ちょっと何やねん? 2万円?
私、こんなん、聞いてへんで!
あの人(派遣会社の人選係)、高額な立替金のことなど、全く口にせえへんかったで!


そこのエージェンシーのギャラ締め日と支払い日は、末締めの末払い。
すなわち、立替る商品を購入するにあたって、イオンカードであろうが楽天カードであろうがセゾンカードであろうが、どんな種類のクレジットカードを使っても、ギャラと共に立替金が我が口座に振り込まれる前にカードは落ちてしまうのだ!


トホホだよ。


こうなると、ある意味、派遣会社の策略どころか、詐欺に近いのではないかと、感じられてくる。


写真は1番下の孫(3歳)。