今にして振り返れば、身体が疲れやすくなっていたのだろう、きれい好きな夫が些細な汚れやゴミでイライラするようになったのは、昨年の暮れあたりからだったっけ。
ガン告知から6日。その傾向は加速している。
告知されて2、3日目までは、ガンと闘ってやるぞモード満点で饒舌ですらあったけれど、ここ2、3日は、仕事以外のプライベート時にその覇気はない。
声にも張りがない。
それどころか、
「歯磨き粉やデンタルリンスは、口中の常在菌を殺すから免疫力が落ちる。俺は今日から塩で歯磨きする。口の中に入れるものには気をつけにゃ」
などと言い出した。
やはり、気になって、より神経質になっているのだろう。
まあ、実際に昔は塩で歯磨きをしていたと聞くから、別にそのやり方でも良いのだが、どうしても臭いは感覚的にせよ気になる。
昔と今では食べ物や生活様式も同じではなかっただろうし。
ここで、大切なことは、
「そんなの現在の暮らしにマッチしていない」
と、のっけから否定しないこと。
一応は、
「ふうん。そうだよねえ」
と認めること。
夫のような性格でなくても、人間は自分の考えや気持ち頭ごなしに否定されるとカッとなり、ますます意固地になって自説に固執するものだ。
認めた上で、その説に対してさまざまな角度から情報収集し、しばらく時間をおいて
「さっきのことに関してはこんな情報もあるんだよ」
と、冷静に示すことだ。
今回は、成分を厳重にチェックした上で、無添加歯磨き粉と無添加デンタルリンスの使用を提案した。
ぶっちゃけ、お値段が気になるのが本当のところながら、星の数ほどある治療院の中から我が家を選んで下さった患者様の気持ちを考えれば、それくらいは惜しくない。
施術は至近距離で行うから、けっこう人の口の臭いは感じやすいのだ。
のっけから否定しない。
このこと、過激派のヴィーガンや、やはり過激派の反ワクチン派の人も心して欲しい。
「ヴィーガンは、進んでいる欧米では当たり前のことよ。日本は遅れているのよ」
「ワクチンを打つ人は、政府のデマに洗脳されてしまっている。ホンマ、アホばっかり」
なんて、こういうセリフを浴びせられたなら、たいていの人間はこんなふうに返したくなるだろう。
「へえ、そうなんですか。で、かようにおっしゃるあなたは、進んでいて、さぞ賢いんでしょうなあ」
と。
100人いれば100通りの「背景」があり、そこにいたるドラマもそれぞれ。
自分と異なる意見をとなえる人の人格まで否定してはいけない。
写真は、華岡青洲の妻の実家のかまど。
かつて、和食も、栄養的に「遅れている」とされた時代もあったんだよね、、、。