自分の中の「治したい気持ち」が病への抵抗力を増す。

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夫の大腸がん告知からまる1週間が過ぎた今日。
たった7日しか経っていないのに、我が感覚では7ヶ月経ったような気がする。


他県で家庭を持ち、3人の子のワーキング・マザーとして奮闘している娘ともLINEで連絡を取り続けた結果、基本的な部分では
「療法には関係なく、お父さんが納得する形で支えていこう」
と言う方向でまとまった。


もうあの性格だし、外科手術と抗がん剤の2つをメインにガン治療を行う西洋医学に身をゆだねてしまうことは、例えが飛躍し過ぎるかも知れないけれど、伝記映画も作られたイギリスの人文学者トマス・モアが信仰を捨てて時の権力者の力に屈するようなものだ。


すなわち、当時カトリックが国教だったイングランドにおいて離婚は禁じられていたのに、跡取りが欲しい国王は男児を産まない王妃を離婚して別の女性との再婚を強行しようし、モアはそれに反対したから処刑されたのだが、その行為は、ズバリ、彼自身の「これまで」を肯定し、筋を通したと言うことでもあるのだ。

ここいら、一般に信仰心が薄い(?)とされることもある日本人にはわかりにくい心理かも知れないけれど、モアにとってカトリック教義に反することを認めることは信仰を捨てることであり、イコールで精神的には死を意味することだったのだね。
あれ以外の選択はなかっただろう。


ずっと東洋医学や伝統医学、民間療法を研究し、患者さんに何十年と施術してきた夫にも、それと似た面がある。
夫の「これまで」を認めることが、夫にとっての最大の「治療」だ。
実際に夫の療法で治癒した人がいないわけではないしね。


結局は、自分の中の「治したい気持ち」が1番大切なんだろう。
治療する側に全面依存するのでなく、心の底から「治したい」と切望し、そんな自分を信じ切ること。
そうすれば病と闘う抵抗力も増すのだろう。


ここで思い出すのが、独裁者ポル・ポトが政権を握っていた頃のカンボジアで、外交官だったカンボジア人の夫を殺され、息子たちと強制労働に従事させられた故内藤泰子さんの手記にあった、こんな体験である。


不衛生な環境の上、過酷な労働と粗末な食事で体力を奪われたのが一因でチフスに罹患した内藤さん。体重が20キロ台までに落ち、もうダメだと観念した時、かつては中華料理店を経営していた知人がチャーハンもどきを作って持ってきてくれた。

一口食べるや、その美味しいことよ! 長い間ろくな食べ物を口にしていなかった内藤さんは、感涙にむせびながら全部食べた。
すると、あら、不思議。その晩からチフス特有の症状は治り、脱水による危険も脱した内藤さんは助かったそうだ。


これね、ありえると思う。
美味しい美味しいと、全身全霊で感じながら食べていた時の内藤さんの脳内にはアドレナリンが出まくっていたはずで、それが免疫力を大幅にアップ。チフスに打ち勝ち、チフスを追い出したのだ。


人間は、もうダメだと自ら生を放棄した瞬間から、黄泉の国へ足を踏み入れてしまっている。


写真は、カンボジアアンコール・ワットにて。
原始共産主義を唱えて自国民を大量虐殺したのみならず、あちこちの偉大な史跡まで破壊してしまったポル・ポト政権が落としていった「負の遺産」が、かくも美観の隅々にさえ見られ、人間というもの、命というものにも考えさせられた。