砂糖もみりんも不可で、無農薬有機野菜を使うがん自然治癒治療食は、作り手に負担がかかるよ。

f:id:ellenyannyan:20220415084950j:image

(注)昨日に書いた記事。

 

大腸がんの治療を、手術も抗がん剤放射線治療も、もちろん化学療法も拒否して、東洋医学と伝統医学と民間療法のミックスで治すと決意した夫。
この治癒法。厳格なルールが、食事にも生活にも存在する。


例えば、野菜は完全無農薬を使うのでネギやシソにいたるまで農薬除去をせねばならず(酢水につけて農薬を取る)、砂糖はおろかみりんすらダメだから、普通なら簡単に出来る料理一つにしても理科室で実験するか如く試行錯誤して作り、結果、いつもよりずっと食事作りに時間がかかる。

 

そこまでしても、やはり、当たり前か。
「え? 砂糖もみりんも使わない切り干し大根や若竹煮やきんぴらごぼうって、こんなに美味しいの?」
と、目からウロコのレシピもあったけれど、まあ、通常の料理法で作った方が美味しいレシピがほとんど。


料理集も出ている、ガンの人のための食事は、基本的にあまり美味しくないのだ(味が薄い)。


「いつもより時間がかかるのに、こんな味?」
と、まずそのことが、自分の努力や工夫を否定されたようで、悲しい。


次に、およそ百歩ゆずっても不味いとしか言えないレシピもあり、今後ずっとこんなものを作るのかと思うと、正直、気が滅入ってくる。


例えば、めんつゆ。
がん患者様に書かれた料理本に、出汁と醤油だけのめんつゆが紹介されていたが、、、はっきり言おう。
「まずーーーーーーい」
私が関西系の味付けに慣れているせいかも知れないけれど、一口すするや、涙が溢れてきた。
「こんな味を、夫は、そして治療に付き合う私も今後は食べ続けないといけないの?」
と。


今夜、堪忍袋の緒が切れたのは、夕食中の夫の言葉。
「生野菜はないんか? 酵素をとらないといけないから、生野菜は毎回出して欲しいな」。


カッとなった。
いつもより何倍も食事に手間と時間がかかっているのに、さらにそんな中でも漢方薬になるほど身体に良いのだと言う公園の自生タンポポを大量に持ち帰り、
「うまく調理してよ」
と、妻の私にさらなる負担を押し付けるほどなのに(これも手間だった。犬の尿や木々への散布剤が降りかかっているかも知れないことを考えたら、まずは殺菌しないといけない)、いとも簡単に口にする。


負担が多い。
食事だけ取り上げても、これでは作る側は理科実験室と化した台所に長期間拘束されてしまうではないか。


やってられないよ。
この後半、仕事が詰まっているのに。


ここで、脳裏の片隅に居座るもう1つの本音が頭をもたげる。
「流派にとらわれず素直に医師のことを聞いて入院してくれたら、食事は病院側が用意してくれるし、身の回りのケアもある程度まではしてくれるから、私は仕事をセーブすることもなかったのに。そもそも自営の我が家は病気で仕事を休むことになっても勤め人と違って何の補償もない。その時のための保険なのに、入院しないとビタ一文出ない。だから、せめて私だけでも仕事に出ないといけないはずなのに」。

 

本当に我が家は、通常のがん患者家庭とは異なる課題も抱えている。


写真は、華岡青洲の里、和歌山県紀の川市名手のみかん畑。
気候が温暖な和歌山ならではの光景だ。