イマジネーション

19日の海の日はジャスコ久御山店でエバラの焼肉のたれ四種類のデモ。
 よく知られた商品だし、時期的にも焼肉はマッチしているので、よく売れた。

 大阪は心斎橋にあった会社に勤めていた頃によく行っていたブティックに、とても服の薦め方が上手
なおねえさんがいた。
 手にした服のデザインや素材の特徴ばかりでなく、その服を着た時の状態を、こちらに巧みに想像さ
せてくれるのだ。
 
 その服を着てどこに行くのか? 何をするのか? 誰に会うのか? 
 女友だちとラブコメディ系の映画を観に行くとしたら、その後はどんな場所で、どんなものを飲んだ
り食べたりし、どんなことにおしゃべりの花を咲かせるのか?
 さらに、子どもの学校の参観日にも着ていきたいとなると、何をどう組み合わせたらよいのか?

 私たちの仕事のセールストークも同じ。
 今夜は焼肉。
 どうして?
 連休が終わり、お父さんは明日から仕事。暑い中、バテないよう、がんばってもらわねばならない。
 そこで焼肉でパワー補給。
 肉ばかりだと栄養が偏るので、なすびやピーマン、カボチャなどの夏野菜も一緒に焼いて食べる。
 皆でワイワイ。一家団欒。
 お母さんは準備も調理も簡単だし、後片付けも楽。
 いいことづくめ。
 こんなふうに話をすすめていく。

 親友が話していた。
「近所のスーパーにも、ウィンナーとか焼くおねえさんやおばさんが時々くるよ。おねえさんはダメ
やね。メーカーから指示された通りのマニュアル用語をオウムのように繰り返すだけ。セリフに熱が
ない。うそっぽい。そこへいくと、おばさんは生活体験があるから、自分の言葉でしゃべる。説得力
がある。買ってみようかなという気になる」

 まあねえ。
 もっとも、男性や、女性でも未婚で普段は台所に立たないマネキンでも、血の通ったセールストー
クが出来る人はいるよ。
 彼らや彼女たちに共通することは、想像力(イマジネーション)の豊かさ。
 これは、ひいては、他人との共感度の高さとも結びつく。

 こうしてみると、この仕事、役者や小説家に似た部分がある。
 ホラ、その経験がなくても犯罪人を演ずる役者もいるし、書く作家もいるでしょ。

 ミュージシャンにも似ている。
 グルーピーの悲恋を歌った「スーパースター」という曲一つでも、元祖デラニー&ボニーが歌った
のとリタ・クーリッジが歌ったのとカーペンターズが歌ったのとでは、おのおの全く違う。さらに、
ベット・ミドラー盤を聴くとエロティシズムまで匂ってくる。
 曲の解釈、表現方法がミュージシャンによって異なるのだ。
 としたら、同じエバラ焼肉のたれでも、販売者のアプローチの仕方によって消費者にそれぞれ違っ
たイメージが伝えられることがあるのも、当然すぎるくらい当然。

 ただ、商品そのものを作るわけではないから、真からのクリエーターとは言えないけれどね。

 なお、イマジネーションが豊かな人は、例外なく好奇心が強く、雑学もある人だ。