どうしたんだろう?
本来、クラッシックの声楽は好きでない。
あの大袈裟な表現、人間離れした声、現実にそぐわない歌詞。
何より、嫉妬。
どんなに努力したって、あんな澄んだ声は、私には出せないからね。
地声が裏声っぽい人はクラッシックの声楽では有利だ。
私のように地声がキタナイ人は、そこからして、既に失格。
マリア・カラスをさかんに聴くようになったのは、最近。
現場で隣り合わせた同世代の女性の声がとてもチャーミングでね、聴いているだけで心地よいの。
「奥さん、いい声していますね」
と、昼の休憩時間に話しかけ、雑談しているうち、関西では有名な音大で声楽を学んでいること
がわかった。
大学を出て、でも仕事は音楽に全く関係のない分野に進み、結婚して家庭に入り、子育てが終了
したのを機会に月に四日だけマネキンの仕事をはじめたんだって。
「最初はテレフォンアポインターをしようと思ったんです。だけど、あれはお客さんの顔が見えな
いでしょ」
素晴しい歌声じゃないの!
しかも、偶然。
教育学部ながら音楽科に進んだ娘が、授業でお手本とすべく聴いていた声楽のCDの数々の中に、
マリア・カラスの盤もあった!
幸せだな。
夢中になれる何かに巡り合えることは、そうあるものではない。